本当に心配そうにしていた。私を見て、大丈夫かと問いかけるように。
 先生が来て、私に体調を聞いてきた。私は頷きながら先生の質問に答えたら、先生は言う。
「…頭を打ちましたが、問題はなさそうです。一応、明日検査しますから」
 先生はそう言ってから、隣にいた看護師に報告していた。
「先生。工藤って子はどうなりました」
 私は気になっていたことを先生に聞いた。
「あの男の子ですか。今朝、亡くなりましたよ」
 先生は看護師と目を合わせてから、申し訳なさそうに私に言った。
「…っ嘘ですよね。工藤は生きてますよね。だって、さっきまで話してましたよ。先生!」
 私は先生の袖を掴んで、先生に言い寄る。
 そうだよね、だって、交通事故起きても話していたよね、夢の中でもさっき話していたし…
 嘘だよね、そう言ってよ。心の中で叫んだ、工藤は生きてるって…
「残念ながら、工藤さんは亡くなりました。最後まであなたの名前をずっと言ってましたよ」
 先生は私にお辞儀をしてから、目だけ私に向けて奥歯を噛みしめてから看護師と共にドアを開けて去っていた。
「……っ、う、う、うっううっ」
 私は顔を両手で押さえて、泣き崩れた。
 工藤は私のために、身を委ねてまで守ろうとしてくれた。そんな姿に両親は言う。
「…宙を守ってくれたみたいよ。工藤君は。犯人はまた宙を担いで、逃げようとしていたところをたまたま通りかかった警察官に捕まったそうよ」
 母さんは私の涙ぐむ姿を見ながら、工藤のことやあの男のことを伝えてくれた。
 隣にいた父さんは、涙を堪えているのか黙って私たちのことを見ていた。
「……っ…そ…う」
 私はポロポロと涙が溢れて、声がかすれて返事をした。
「母さんね、工藤くんに秘密にしてくれって言われたことあるの」
 母さんは微笑んでから、私の左手を握りしめてきた。
「…な…に?」