途切れ途切れに声を発しながら、男は私たちのいる所で足を止めた。
 周りは目を見開いて、キャーと言っていたり、救急車を急いで呼んでくれる人がいたり、ただ見ているだけの見学者もいた。
「今宮に何もするな。したら、お前をぶっ潰す」
 工藤は男に力強く睨みつけて、言い放つ。
「あの時ってなに?」
 彼の言葉を無視して、座ったまま私は立っている男に聞き返す。
「…あの時だよ。あんたが中学生の頃、俺らが襲おうとした時、あんたの後ろにいたのは」
 男は右側に口角を上げて、私に信じられない真実を言葉にした。
「……いや、中学時代は工藤とまだ出会ってないし……。工藤とは高校に入学したときに会ったから。初めてなはず…」
 私は下に俯き、目の前にいる襲おうとした男の言葉に信じるべきか信じないべきか悩んだ。
 工藤とは高校に入ってから面識があるのに、なぜそんなことを言うのか分からなかったが、ずっと思っていることはある。
 本当に工藤はあの時が初めてだったのか…不思議に感じることがある。
 それは、私が知っている公園にいたこと、前に好意を持っていると言ったこと、私にだけ何故か笑いかけることがあった。あの男の言葉に私は目を丸くした。
「…はっ。その顔は分かってんだろ」
 男は私に言うと、工藤は血が上りそうなほどの目で言った。
「……っ、今宮には何も言うな。今宮、あの男を信じるのか」
  工藤は顔を少し上げてから地面に手をついて、鋭い目で男を見てから、私の方を向いた。
「…信じるもなにも工藤こそどうなのよ。あの男の答え通りなの?」
 私は工藤のことは家族の一部分しか知らない。
 工藤の母から暴力を受けていること、愛情が不足していることで子供のように縮こまってしまうことしか分からない。
「……っ、そうだよ。今宮。俺は前から今宮のこと知ってた」