「……そうだよ、ニュース見たのか。ストーカーの何が悪い」
 男はニヤリと笑って、私の両腕を掴んだまま口角を右だけ上げて、笑っていたのだ。
「何でそんなことするの?」
 私は男に黒目を見据えて、聞く。
「自分以外の誰かを守ることが正義だから。だから、俺はあの子とこの子などいろんなストーカーをしてきたが、忘れられないことがあって、それがあんた。中学時代のあんたを何も出来なかったからな」
 男は笑ったまま、私に言ってきた。その男は、何を言っているのだろうか。
 自分以外の誰かを守るって……
 正義でも何でもないし、男がやっていることは犯罪で人の気持ちを弄んでいる行為だ。
「私に何もできなかったからって。なんで今更」
 私は捕まられた両腕を男が持ったまま、睨みつけるように聞く。
「今だからだよ。お前はずっと一人だった。けど、変わっていた。それを狙ったんだよ」
 はんと声を発して、上から目線で私の顔を見てくる。
「狙ったってことは、前から私のこと見てたの?」
 私は驚いて、男を見据えると、ただ笑っているだけだった。
 その笑う姿は恐怖を感じた。男は正義というものをかけ違えている。
 ストーカーという行為が、誰も守れるはずがない。
 守るというのは怖さを人に与えるものではない。
 優しさで包んでやるのが、守るというものだ。
「そうだよ。前からずっと。ストーカーっていても毎日はキツイから、週一であんた一人の時に見てたりした。誰かといるのを目にしたとき、俺は思った。あやつがあの時にいた男だと」
 男がまだ何か言いたげだったが、複数台の車のクラクションが鳴り響いた。
 私たちに「邪魔だ。どけよ」「何してんのよ、早くしてよ」「早くしろ」と怒涛な声が複数の音で聞こえてくる。
「……あんたもここいたら…」
 私は男に言おうとしたが、すぐに男の言葉でさいぎられた。
「いいよ、別に。死んでもいいし」