目の前に工藤と会うと、今宮宙から電話が来た。
　工藤は携帯が鳴っているのが分かり、無理やり六弥の携帯を取ってから六弥に言ったのだ。
　今宮には今俺がいること教えないでくれと。
　工藤は六弥の携帯を返して、今宮宙との話が終わるまで目の前にいて聞いていた。
「いいんだよ、六弥。聞いてほしいことがあるんだ」
　工藤は神妙な面持ちで六弥に話しかける。
「……なに？」
　珍しく六弥と向き合うと、本当に心配そうな顔で工藤を見てきた。
　何かを決心したかのように、六弥に伝えようとしていたのだ。
「…もし、俺が急にいなくなったら、今宮を一人にさせるな。同じクラスでも今のように接してやれ」
　工藤は六弥の右肩をポンと優しく叩いてから、口角を上げていた。
「なんでそんなこと言うんだよ。お前がいるじゃないか。今宮さんはお前が必要出し、お前も今宮さんが必要だろ」
　六弥は工藤の胸を叩いてから、目を見開いて力強い声で発した。
　今宮宙だって工藤だって、お互い合わないように見えるけど、違う。
　心の底で埋めれない空白部分をはめるように支え合っているのだから。
「…そうしたいけど、俺だって……」
　工藤は声を発してから口を閉じた。
「だったら、そうしろよ。なんで悲しそうな表情で僕に言うんだよ」
　六弥は工藤がどこか遠くに行きそうな目をして、六弥を見ていたのを感じながらも工藤に声を発した。
「……お前に渡したいことがある。これ」
　工藤は右手に持っていた紙袋を六弥に渡した。
「……重っ。なにこの分厚さ。これどうすればいいの？」
　受け取った六弥は紙袋に入っている複数枚の紙束を膝を屈んで、目の前にいる工藤に聞く
「何も聞かないでくれ。これは十年分の量がある。それだけ。後々、分かるから。じゃあな」
　工藤は紙袋を六弥に手渡してから、後ろを向いてから片手を上げてから歩いていた。