寒さが増してきて、冬に向けての準備が始まってきた。
 私は最近、学校では特に問題がなく、順調だ。
 友達は出来なくても、学校生活では何も思わなくなった。
 六弥くんとは教室以外で話している。
 六弥くんの連絡先は交換しているから、連絡があったら、屋上や空き教室で話している。
 私の立場を理解してくれて、教室では話もしない。漢字(かんじ)だから、クラスメイトは六弥くんとは仲良くないと思われているはず。
 問題は、家族のことだ。本当の家族じゃない。
 優しくしてくれるし、私のために考えて、接してくれる。
 けれど、たまに本当の愛なのか確認したくなる。
 時折、寂しさと孤独感で私の心は覆われるからだ。
 それを回避するためには本当の家族じゃない母と父を責めているのかもしれない。
 誰も私の心の隙には入れないからだ。私は恒例のラジオをつける。
 久しぶりに聞いたが、いつものくっちゃんさんは出てこなかった。
 次回はくっちゃんは出てくるのでしょうか。
「毎日のように投稿していたのに最近見ませんね。面白いエピソードお待ちしておりますよ」
 ラジオのパーソナリティは元気よさそうにくっちゃんさんの投稿を待ちわびているようだった。珍しい。
 くっちゃんさんは毎日のように投稿しているのにしてこないということは何かあったのか。
 誰か知らないのに、くっちゃんさんの投稿がないだけで、心が沈む。
 十年前から何かあれば私はラジオを付けて、くっちゃんさんの投稿を待って、ラジオを聞いていた。
 年齢も所在地も不明だが、何故か初めて聞いた投稿から目を離せないほど考えさせられることばかりだったからだ。
 初めて聞いたくっちゃんさんの投稿は衝撃的だった。
 僕は今日ある事実を知ることになった。飴が溶けたら僕は何もかもなくなる。
 それでも僕はあの人のためにもう覚悟はしている。
 あの人のために、見守ってあの人の生きる力を強めていきたい。
 どんな形にしろ、僕はあの人を一人にしない。ラジオのパーソナリティはこう言った。
「誰かと約束したのかな。あの人とは誰のことでしょうね、だけど彼にとっては
とても重要で大切なことなのかもしれないよ。投稿してきたくっちゃんさん、投稿お待ちしておりますよ」