「その公園に俺がいたとしたらどうする?」
 俺は今宮に聞いてみた。どう返事が返ってくるのか、今宮はどこまで覚えているのか。
「……なに言ってるの。そんなわけないじゃない。でも、ある男の子が飴を拾ってそこに置いていくと思ったけど、持っていたの。何だったんだろう」
 今宮は首を傾げて、不思議そうにジャングルジムを見つめていた。
「…そうだよな。今宮は大丈夫か」
 俺は今宮に聞いた。
「…私に聞いてるの? それより、自分の心配したら?」
 今宮は俺の心配ばかりだ。
 自分のことでいっぱいいっぱいなのに、俺のこと気にかけてくれるなんて嬉しい。
「……俺は大丈夫だ。今宮が心配なんだよ」
 俺は今宮に言う。
「…うん、分かってる」
 彼女は頷いていた。
「お前が幸せならいい。それだけ」
 俺はズボンのポケットを両手に入れて、右の方に顔を傾けて澄んだ黒目で彼女を見つめ、声を発した。
「…なんでそんなこと言うの。あんたはあんたの幸せがあるでしょ」
 今宮は深刻そうな表情で俺を見つめて言ってきた。
「……俺はそうやって生きてきたから。俺は…俺の問題は自分で解決するから」
 俺は前を向き直して、歩き始めた。
「話、まだ終わってないでしょ! 私は一人で解決してきた訳じゃない。あんた…いや、工藤がいたからここまでやってこれたって思ってるから。工藤だってそう思ってるんじゃないの」
 今宮はいつもより力強く声を発して、俺に問いかける。
 確かにそうだ。俺一人で何もかも出来てきた訳じゃない。
 今宮がいたからだ。俺が嫌な思いをしていたら、傍にはいつの間にか彼女がいたんだ。
 彼女の問いかけに足が止まり、俺は彼女の方に振り向いた。
「……じゃあ、今宮は俺に何をしてくれる?」
 俺は今宮に聞く。
「何って。具体的には」
「……お前が思いつくもので」
 俺はそう言うと、今宮は考えていた。