「あ…」
 今宮は声を発した。
「当たりでしょ。分かったから、今から行くから。そこで待っててよ、いい?」
 今宮は慌てた様子で電話を切って、俺がいると思われる場所まで向かったみたいだ。
 俺は五分間だけ、今宮を待つことにした。
 さっき座っていたジャングルジムの下の方に座り、彼女を待った。
 俺はその間、目を瞑っていた。
 目を開けると、もう五分は過ぎていたので、俺は立って家に戻ろうとした。
 その時だった。俺は公園から出て、歩いていたら、いた! と声を出している人がいた。
 その声がする後ろを振り向くと、今宮がいたのだ。
「今宮」
 俺は目の前にいる彼女を見上げて、名前を呼ぶ。
「工藤、何してたの?」
 彼女は俺に聞きながら、ガツガツと足を踏み出して俺の前に来て、両腕を腰において聞いてきた。
「…なにも」
 俺は答えなかった。本当に何もなかったわけじゃないけど、言えなかった。
 言っても、今宮は何事もなかったように傍にいてくれるだろう。
 それを期待している自分に腹が立つ。
「何もはないでしょ。六弥くんも心配してたんだから」
 今宮は心配そうに俺を見つめていた。
「じゃあ、聞くけど。なんで俺がこの場所だって分かったんだ?」
 俺は今宮がここの場所に来るなんて思いもしなかったからだ。
「それは昔ここに住んでいたから。よく小学校の頃、来てたし。あの公園も覚えてる」
 今宮は公園の方を向いて、小学校の頃に来ていたことを思い出しているのか笑顔を浮かべていた。
「…ふーん、公園で何してたの?」
 俺は当時の今宮の様子が気になった。彼女はその当時何をしていたのか? 
 本当に覚えているのかどうか。
「ジャングルジムのてっぺんに座って、あそこの駄菓子屋にある飴を沢山両手で持って食べていた。懐かしいな」
 今宮はジャングルビルのてっぺんを見て、ニヤニヤと口角を上げていた。