今宮といる時間が愛おしくて、離れたくない。
　本当は頑張って、生きなくてもいいのに俺は欲が出た。
　今宮と一緒に話したり、笑ったり、走ったり。彼女といると、安心して自分に戻れる。
　俺は店主が行った道を見つめたまま、立ち尽くしていた。
　ため息をついてから、俺は右手で持っていた携帯を目にして、ロック画面を外して
今宮からの着信を見る。今宮の電話番号を登録して、俺は今宮の電話番号にかけた。
「もしもし」
　今宮の声が電話越しで聞こえた。俺は黙った。
　「…もしかして、工藤？」
　声を発しなくても、今宮は俺だと分かった。
「ああ」
　俺はまばたきをして、前に今宮がいると思いながら、前を見つめたまま返事をした。
　周りには誰もいなくて、いたとしたら野良猫が俺の左側に通ったくらいだ。
　野良猫は俺の方を見て、何の電話かな？　まぁ、いいやと思っているのか、そっぽを向いてどこかに消えていた。
「心配したのよ！　何してんのよ」
　今宮は怒っていた。そりゃ、そうだ。連絡なく、消えたから。
　でも、そうじゃないとやっていけなかったからだ。
　ああと俺は返事をするだけだった。
「なんか言ってよ。返事するだけじゃ分からないんだから」
　今宮は返事だけする俺に不満をぶつけてきた。
「…じゃあ、今俺のいる場所を当ててみて」
　俺は無理難題を今宮に押し付けた。今宮には分からないだろう。
　いる場所をあてたとしても、それは偶然に過ぎない。
「はあ？　分かる訳ないでしょ」
　今宮はそう言ってから、黙り込んだ。
「…どうした？」
　俺は黙り込んだ今宮に聞くと、何も声を発してこなかった。
「……っ……今、学校の鐘の音したよね」
　今宮は今音がしたものについて考え込んでいるのだろう。言葉にして、俺に伝えてきた。
「え？　いや…」
　俺は言葉を紡いでから周りを見渡してみると、小学校の鐘が鳴り響いていた。