俺は何故か謝ることになった。それ以来、俺は兄貴をついて回ることはなかった。
 母さんは俺が持っていることを言わなかったから怒っていたが、滅多に怒る人ではない。
 優しい母さんのままなのだ。怒っても、優しくなだめてくれるのだ。
 母さんの優しさがあったから、俺は兄貴の言動に耐えられた。
 今は味方の母さんまでいなくなり、俺は失望していた。
               *
 俺は両足を広げたまま、地面にうずくまってから立ち上がった。
 生きる気力がなくなるほど、心は衰退していた。
 どこに行こうか彷徨っていたら、小学校の頃に行った公園があった。
それは昔ジャングルジムのてっぺんに女の子がいて、飴が降ってきたことがあった公園だ。あの時以来、行っていなかったので懐かしく感じた。
 ジャングルジムの下の方に当時と同じく、座った。
 座ってから、俺は両手を足の両ひざに置いて、下を向いた。
 何もかもどうでもよくなっていた。どうせ、俺はもういらない存在だ。
 どこにいても。俺は携帯の電源をつけると、今宮から電話が五件以上もあった。
 今宮から初の電話だった。電話番号は、六弥から教えてもらったのだろう。
 俺が学校に来ていないから。毎日、学校に来ていたのに俺が来ていないから。
 俺のことを心配してるのだろう。
 携帯を持ってると、また今宮から着信がきていた。
 プルプル プルプル プルプル。今宮からきているのに、電話には出れなかった。
 出ても、なんて声をかければいいか分からなかったからだ。
 俺は座ったまま、携帯を両手で強く握りしめて俯いていた。
 そんな時、ある人が声をかけてきた。
「あの時の……」
 ある男が俺に話しかけてきた。
「……はい? 俺ですか?」
 俺は首を傾げて、ある男に聞き返す。
「うん、君、僕のこと覚えてる?」
 ある男は頷いて、俺を見つめていた。
「え?」