「あっちにいたと思うよ。探してみたら」
 女の子は右の方を指をさして、飴を舐めながら言っていた。
「あ、うん。あ、これ落としたよ」
 俺は地面に落ちていた飴一つ拾って、ジャングルジムの下の方を座っていたが立ち上がり、てっぺんにいる女の子と向き合い、聞いた。
 女の子の顔は見えなかった。
 太陽の光で眩しくて、女の子はどんな表情でいるのか分からなかった。
「そこに置いておいて。私あとで拾うから」
 女の子はジャングルジムのてっぺんに立って、俺を見上げながら言い放つ。
「ありがとう」
 俺は礼を言って、兄貴が行ったと思われる場所まで行った。
 右の方に行き、周りを見渡しながら兄貴を探した。
 すると、近くのカフェの外で兄貴と同級生と思われる男子と話をしていた。
「あ、兄貴…」
 俺は兄貴を呼んだが、兄貴たちは俺のことを話していた。
「……お前さ、弟のことどう思っているの?」
 同級生は兄貴に俺のことを聞いてきた。そんなことなぜ兄貴に言うのだ。
「…なんで?」
 兄貴はストローを加えたまま、目だけ同級生に向ける。
「だって、お前気づいてるのか、兄貴面してるけど目が笑ってないんだよ」
 同級生は苦笑いを浮かべて、兄貴の様子を窺っていた。
「………よく気づいたな。さすが長年一緒にいるだけあるなぁ」
 兄貴は企んだ顔をして口角を右だけ上げて、微笑んでいた。
「…お前、もしかして弟のこと家族だと思ってないのか」
 同級生は両肘をテーブルにつけて、兄貴に確信つく聞き方をしてきた。
「……アハハハ。面白いこと言うね。そうだよ、あまりいいように思ってない」
 兄貴は背中を反って、にやりと笑っていた。
 小学生だった俺は口を開けて、地面に置いたはずの飴を右手で握りしめていたのだ。