「それは大体今宮が……」
　工藤は私の事を片手を広げて私の方を指していた。言いたいことはそうよね、私のことか。
「分かった、わかった。うん、そうだったね、何も言わない」
　私は口を閉じて、真正面に向き直してから工藤の方を見なかった。
「……っ、おかしい」
　工藤は笑っていた。
「どこがおかしいの？」
　私は眉をひそめて、工藤を睨む。
「何もない」
「何もないことないでしょ！」
　私は言い返すと、工藤はひたすら笑っていたのだ。
　その様子をクラスメイトが見て、コソコソと私達のことをチラチラと見ては話をしていた。
　そんなことなんて知ったことかというように、六弥くんが工藤に話しかけきた。
「工藤！ 心配したんだぞ。何してたんだよ」
　六弥くんは工藤をいきなり抱きしめて、泣いていた。
「…なっ、な、に泣いてんだよ」
　工藤は苦笑いをして、離れろよと六弥くんの手を引き離そうとしたがなかなか離れず、工藤は困っているようだった。私はその姿を見て、笑った。工藤は無表情と思われがちだが、そんなことはない。人並みに感情もあるし、幼馴染を大事にする人だ。
　そんな彼が抱え込んでいるものがあり、苦しんでいる。
　私はそんな彼になにかしてやれないのかと思うようになった。
　六弥くんと話している彼を見て、そういう感情に浸られた。
　六弥くんは一向に工藤を離してくれなく、先生が来たら離していた。
　授業中はいつもの工藤。私は授業に参加し、隣にいる工藤はいつものように寝ていた。
　授業参加していないのに、寝れるなんてどれだけ頭に入っているのか。
　私には出来ないことだ。授業を真剣に聞かないと、テストが始まったらえらいことになる。
　自分の理解度が低くなり、点数が下がる。ふぅと息を吐いてから、私は先生が黒板に書いているものをノートに書く。書いては自分の中で理解しようと何回も頭の中に入れる。