私は二人に聞きたかったことを口にした。
 恐る恐る口にしたので目を泳がせながら、二人を見て聞いた。
「……それは………可哀想だと思って……」
 朱が本を読んでいたのをやめて、私の方を見て答えた。可哀想……なにが?
「…かわいそうってなに?」
 私は右拳を強く握りしめて、口を歪ませて聞いた。
「……言葉通りだよ。私たちは確かにあなたに興味があった。けど、少し違う」
 桃は自分の爪をネイルで塗ってから、ふぅと息を吹きかけて私を冷たい目で見ていた。
「なにが?」
「学校と家族ともに可哀想だって思ったから」
 桃は立ち上がって両腕を組んで、私を見下ろすように言ってきた。
 最初に話した時は、笑っていて笑顔が印象的だったのに、今はその時と同じ人と本当に話しているのか疑問に思うほどだった。
「なんでそこで家族が出てくるのよ?!」
 私は自分と関係のない家族のワードが出てきて、反論した。
 自分のことならまだしも、なぜ家族のことまで言われなくてはいけないのか。
「だってあなたのお母さんとお父さんは他人でしょ。他人同士なのによく暮らせるなぁって」
 桃は口を開けてから、はっと私をあざ笑うように冷たい声で言い放つ。
「……なんで知ってるの?」
 私は目を見開き、桃に聞き返す。
「…噂で流れてきたのよ、あんたのこと書かれているのを掲示板で見たの」
 桃は自分の髪を指でクルクルしながら、巻き巻きにしていた。
「掲示板?」
 私は学校の掲示板の存在は知らなかった。
「…知らなかったの? 学校の掲示板、見たことない? あそこになんでも書いてるのよ。あんたのこともね。ほら」
 桃は両手で叩いてから笑っていた。私は心の中であざ笑った。
 朱は本を両手で持って、立っている私を見てふっと鼻で笑っていたのだ。
 笑うだけで、何も一言も発していなかった。