自己紹介が終わると、すぐに授業が始まった。
 一時間目の授業は、数学であった。最初の授業ということで、オリエンテーションだった。
 高校一年生では、一年間こういう授業展開をするという流れのプリント1枚が渡された。
 クラスメイト達は、うわぁーこんなにやるの。俺これ苦手だよ。めんどくさそうと口々に言い、嫌そうな表情を浮かべていた。
「嫌なのは分かるが、数学は楽しいぞ。一年間どんな計算・公式が出てくるか乞うご期待。このプリントの通り、進めるけども、合間に先生の好きなことも入れていく。そうすることで、楽しみだろ」
 数学の先生は、田付先生といい。眼鏡をしていて、髪はなかった。いや、坊主頭だ。そして、強烈なのは数学を用いたシャツの柄だ。
 数学がよほど好きなのは分かるが、ダサすぎる。
 クラスメイト全員は、ぷぅぷぅと陰で笑って、プリント1枚のことを話しているようだったが、プリントの裏には田村先生の絵を描いている人が多数いた。
「楽しくないよな。これ」
 私は一人で呟いていると、工藤が聞こえる声で言ってきた。
「簡単だよ。こんなの」
 工藤は私の方を向いて、声を発していた。え? 私に話しかけた?
「…そう?」
 私は一呼吸置き、工藤に聞いた。
「うん。すぐ出来るよ、今宮さん」
 工藤は頬杖をついて、私に何事もなく話しかけてくる。
 さっきまでの眠そうな顔が今目を覚ましたかのように私と目を合わせて、聞いてきた。
 工藤の顔は前髪が長くてよく見えなかったが、私には工藤と目が合っている気がした。
 真っ直ぐな澄んだ目で私を見ていた。
「…出来るんだ。工藤さん」
 私は工藤になんともなく返事をする。
「工藤さんって…工藤でいいよ。どうせあの担任が工藤って言ったから言ってみたんでしょ」
 工藤は作り笑いをしてから、私を見てくる。
「……別にそんなことはないけど……」
 工藤から私は目を逸らして、答える。
 そんなことはないと言っているが、図星だったので何も言えなかった。
「まあ、別にいいけど…」
 そう言って工藤は机に顔をつけて、また寝始めた。
 数学のオリエンテーションが終わり、あっという間に昼になった。
 私は今野琳と前に今野琳と話していたクラスメイト二人と弁当を食べることになったが、私だけあまり話しの中にうまく入れなかった。 
 今野琳がうまく仲介して、クラスメイト二人と話せたけど、グループに馴染めないでいる。