幼い頃、あめを拾ってから、彼にはある光が見えて……
 それは彼女にだけだった。その光は小さくなったり、大きくなったりした。
 なぜか彼女だけ彼は見える。それはあめの仕業だった。
          *
 眩しい太陽が照らせる中、私は受かった高校を足を踏み出した。
 ギュッと右手で鞄を握りしめて、外にあった掲示板を見つめる。
 あっちこっちから、声が聞こえてきた。
 ねぇ、あったあったよ、ほら。私たち一緒やったねーまたお前と一緒かよなどと賑やかな声が響き渡った。私はただその光景を眺めていた。そんな時に、誰かが声をかけてきた。
「……久しぶり。元気してた?卒業式以来だね」
 里奈(りな)は私に、にこやかに笑い、話しかけてきた。
「久しぶり。元気だよ。何組だった?」
 私は口角を上げて、里奈に声を発した。
「……三組かな。なんかあったらよろしくね」
 里奈は掲示板を目を通してから、私に向き直して言った。
「…うん、じゃあ」
 私は返事をして、里奈の目を見てから、手を振った。
 里奈とは中学からの同級生。同級生といっても、たいして話したことはない。
 お互い、存在をしているだけで知り合い程度だ。
 この高校に入学したのは、私と里奈だけだ。あとは、誰も知らない。
 知らない人の中、馴染んでいかないといけない。
 フゥーと心の中でため息をついてから、踵を出した。
 高校一年二組という看板を目にして、ガラッと扉を開けた。
 そこには、沢山の男女が集まっていた。
「私の席は、後ろと…」
 私は黒板側からまっすぐ行き、席を見渡しながら自分の席を探した。
「ここか」
 自分の席を着くと、手提げ鞄を机に置いて、椅子に座った。
 そこは見晴らしがよく、綺麗な空が眺められて、最高なポジションだった。
 気持ちいいーー! 私は背筋を伸ばして、一人で笑顔を浮かべていた。