所在なく上に差し出しただけの私の両腕を、沖田くんが横目でちらりと見る。

「だ、だって腕ってどこに置けばいいの? くう、今だけちょっと肩から外れればいいのに」

「怖いって。……怖いか。おれも怖かった。だって、おれは……衿ノ宮、君に……」

今度は私が沖田くんの顔に顔を近づけ、唇を合わせた。

柄にもないことをして、顔が燃えるように熱い。

でもきっと今沖田くんは、口にしたくはないけれど私に言わなくてはならないと思ったことを、言おうとしたのだと思う。

怖いことは言わなくていいよ。

今は、多分、嬉しいだけでいい。

もう一度沖田くんが覆いかぶさるように抱きしめてきて、それから、私を抱き起した。

荒い息を整えながら、体を寄せ合う。

……私は結構、たがが外れると止まらないたちなのかもしれない。

「……まだ明るいうちに、外に行かないか」

「いいよ。行きたいところがあるの?」

「いいや。ただ、好きな人とキスした後に、世界がどう見えるのか、見てみたい」

……それは、私も見てみたい。

手をつないで、外に出た。

空は確かに黄昏れかけた色なのに、太陽は眩しくて、体が軽くて、まるで夏の朝のようだった。