「うん、大まかには合ってるな。その通りだ、売春だから」

「そんな」

「本当だから仕方ない。言いづらかったろ、ごめんな。さ、行こう」

そう促されて、私は沖田くんの後をついて、駅へ向かう。

訊きたいことがいくつもあった。

でも口に出せない。

私が沖田くんに言っていない、いや、決して言えないことがあるのに、彼のことを一方的に聞き出すというのは気が引ける。

「しかし、知り合いに現場を見られたのは初めてだ。もう少し注意しないといけないな」

「私、本当に誰にも言わないから」

「分かったよ。もう信じてる。衿ノ宮って、いいやつなんだな」

いいやつ。

そんなことはない。

沖田くん。

私は、沖田くんが、寂しそうな顔で、同年代の男子と裸になって抱き合うところを、毎日想像しているよ。

沖田くんが出したこともない声を出して、見せたこともない表情になって、のけぞってすすり泣いているところを、すました顔で頭の中に大展開させてるよ。

私はそういう趣味の持ち主です。

そして、さらに、それだけでもないのでした。どの面下げて、とは自分でも思います。

でも、私は、沖田くんのことが――

罪悪感と緊張感で、過呼吸になりそうだった。

きっと顔は真っ赤に上気している。

消え入りそうに恥ずかしくて、どうか前を歩く沖田くんが振り向きませんようにと祈った。

ビルの波がふっと途切れて、新宿駅東口が覗く。

その手前にある赤信号が、ずっと変わらなければいいのに、と思った。

衿ノ宮燈(えりのみやあかり)、十七歳。高校二年。

沖田世那(せな)くん、同じく十七歳。三ヶ月前からの、私の同級生。

私たちがまともに会話した、これが初めての日だった。