私はそんなところ見たことがないから一切が想像だけど、それだけにイメージは鮮烈だった。

「くっ……」

猫がうめくような声を上げて、私はベッドに飛び乗った。掛け布団を横に丸めて抱きしめ、さらに想像を加速させる。

最高に胸が高鳴った時、私の中の沖田くんは心から愛する人に包まれて、そして――

ちくん、と胸が痛んだ。

あれ?

もう一度。沖田くんが、愛しい人しか見えない目で、とろんとしたその視線を神くんに――

――痛い。胸の奥が、針で刺されたように。

そこで、集中が途切れてしまう。

どうして。

私は、何度も、沖田くんを妄想し直そうとした。

でも、できなかった。何度やり直しても、いや、やり直すたびに、痛みは強くなっていく。

鼻をすすって、ようやく、自分の目元が濡れていることに気づいた。

どうして。

ばたん、とお母さんが帰ってきた音がした。

私は慌てて小説を上書き保存して、深呼吸して涙を引っ込める。

目を閉じると、頭の中の沖田くんは、もう服を着ていて、私を見て微笑んでいた。今日、カフェで私に向けたままの、あの瞳で。

ごまかしようがなかった。

私が沖田くんのウソカノを務めた日は、私が、嘘でもなんでもない自分の気持ちに、改めて気づかされた日になってしまった。

私がいてよかったと言ってくれた。

それだけで胸がいっぱいになる。

この先、どうやって振るまっていいのか分からない。

でもできるだけ沖田くんの傍にいよう。

いつも飄々として見えた沖田くんは、人に言えない悩みを抱えていた。沖田くんだって、迷ったり、困ったりすることがあるんだ。

私がそんな彼にしてあげられることが、少しはあるようで。

どうやらそれは、私の思い上がりではないみたいだから。