彼女のことを考えていたら、朝が来た。

 本当に一晩中考えていたらやはり、好きな人には無償に会いたくなるものである。

(今日もまた誘っていいのだろうか)

 朝ごはんを食べながら、着替えながら、髪の毛を少し丁寧にセットしながら、忘れ物がないか確認しながら。ことあるごとに考えていたが、悩むのは柄じゃない。

 意を決してトーク画面を開く。

『今日も一緒に登校していいですか!?』

 少し緊張して照れているから、ばれないように敢えてテンションは高めに。

(美優さんにとって迷惑じゃなければいいな。そもそも、送らない方がよかったかな。あーーーー、どうしたらよかったんだぁ~)

 悶々としていると通知音が鳴る。慌ててみると、差出人は美優さんだった。

『いいよ。待ち合わせは前回と同じで』

 よっしゃーーーーーーーー!美優さんがどう考えるかわからないけど、登校デートの約束ができた。この上ない幸せになりながら、はたと気が付く。

(美優さんのテンション低い、、?)

 いつも簡潔で同じような文章が返ってくる。それなのに今日は、いつもと違う気がして喜んだ自分を思い出して、迂闊に喜んだ自分を少し恨む。

 そろそろ待ち合わせ場所に行く時間だ。慌ててカバンを持って、少し身なりを整えてから家を出る。

「いってきまーす」

 この声が普段よりうれしそうなのに、圭斗自身が気が付くことはなかった。