「も、もちろんです! 場所を指定してもらえたらそこ行きますんで!」
『楓湖ちゃん、優大くんの家を知ってるって言ってたから、着替えだけして待っててもらえるか。五分か十分で行くと思う。僕は先に病院についてると思うから、絶対に安全運転でって楓湖ちゃんに言っておいて!』
「わかりました!」
通話を切って、着替え途中だった制服を慌てて完成させる。
楓湖さんとも連絡先は交換済みなので、メッセージを送っておこうと文字を入力していたら、
《優大くん迎えに行っていい?》
と、楓湖さんの方から先にメッセージが届いた。
【はい! 家の前にいます!】
と返して、一気に高鳴った緊張を少しでもほぐそうと水を一杯飲んでから、学校のカバンを引っつかんで家を出た。
家の前に出てから、制服のポケットに突っ込んだ携帯電話を見て、楓湖さんにもっと言うことあったんじゃないだろうかと思った。
けど、俺のメッセージには既読がついていて、ならばもう車を運転しているだろうからと追加のメッセージを送ることはしなかった。
運転中に携帯電話を見るのは危ない。
ケージさんからも、安全運転で、と言われている。
五分もしないうちに、小型のバンが俺の前に停まった。
後部座席のドアが開いて、
「優大くん! 乗ってください!」
焦った様子で身を乗り出して言ってくれた霞湖ちゃんにうなずいて、俺も後部座席に乗り込んだ。
「ごめんね、優大くん、なんかいつも巻き込んじゃって」
運転席では、いつものようなお化粧もしていない楓湖さんが、けれど目の力は強くそう言った。
「いえ、そんなことは」
シートベルトをしめながら言うと、助手席に座った李湖ちゃんが声をあげた。