伊月くんの初恋のお姉さん、楓さんが結婚する。
しかも、お腹には赤ちゃんがいるらしい。
両家公認の中だったみたいで、妊娠判明と同時にとんとん拍子に話が進んでマタニティウエディングをするらしい。
伊月くんのお母さんから話を聞いた僕の母さんが教えてくれた。
伊月くんの様子がおかしい原因は、たぶんコレ。
「さて、なに買おうか」
伊月くんは僕の誘いに渋っていたけど、ちゃんと待ち合わせのデパートに来てくれた。
今日も頭はセットされてなくて、服装もだいぶ大人しい。
いつものヤンキーファッションじゃデパートって行き辛いから、ちょうどよかった。
「新生活で使うキッチンアイテムとかいいらしいけど、包丁はダメらしいよ。縁を切るって連想させるから。でも、伊月くん的にはむしろ送りたい?」
とりあえず一通り見て回ろうとフロアを歩きながらしゃべってたら、伊月くんに睨まれてしまった。
「逆に、運命を切り開くみたいな意味でアリっていう話もあるらしいけど」
ペアグラスとかも定番らしいけど、お腹の赤ちゃん入れてもう三人家族だって考えるとちょっと違う気もする。
「うわ、高っ」
食器フロアでグラスを見ていると、目玉が飛び出す値段だった。
確かに家にあるグラスよりもキラキラしていてきれいだけど、さすがに手が出ない。
「僕らのお小遣い何ヶ月分だろうね」
伊月くんに話を振ってもボンヤリとしていて返事がない。
黙ってついてきてくれてるだけ、まあいいか。
僕が決めて、お金だけ巻き上げよう。
とはいえ、中学生男子二人の小遣い予算を考えると、デパートよりもっとリーズナブルなお店へ行くべきだったかもしれない。
「伊月くんは結婚式行くの?」
「……呼ばれてはいる」
フロアを移動しながら聞いてみると、返事はあった。
でもこの感じ、招待はされてるけど行きたくない感じかな。
「そっか」
実は母さんから楓さんのおめでたい話を聞いたときに、伊月くんも家族で招待されてるって話を聞いていた。
でも、伊月くんの口からも聞きたかった。
知らんとか言われなくてよかった。
「サムシングブルーって言ってさ、結婚式のときに花嫁さんが青い物を身に着けると一生幸せになれるっていうジンクスがあるんだよ。知ってた?」
「知らん」
こっちは別に、知らんの返事でいいや。
素っ気ないけど、無視はやめたみたいでよかった。
「その青色ってのがさ、見えないところに身につけないとダメでさ……アレとか、ちょうどいいんじゃない?」
俯きがちに歩いていた伊月くんが顔を上げて、僕の指差す方向を見た。
そして、見る見る顔が真っ赤になっていく。
「おまえ、何考えてんだよ!」
僕が指さした方向には、光るトルソーが青いランジェリーを着ていた。
ふんだんにレースがあしらわれて、胸の谷間にはキラキラ光るチャームがついてる。
ショーツの腰とお尻の間あたりはリボンを編んだ感じで、肌が透けて見えること請け合いだ。
「ブラはさすがにサイズ難しいけど、パンツぐらいならなんとかなるでしょ」
かわいいけどちょっぴりセクシーな下着目掛けて直進する僕を、伊月くんが羽交い絞めにしてくる。
「楓姐さんにセクハラすんじゃねえ!!」
僕は姉妹がいるから、あんまり女性ものの下着に抵抗がないけど、一人っ子の伊月くんには効果抜群だったみたいだった。
「おまえの冗談は笑えねえんだよ!」
「じゃあ、伊月くんはなにがいいと思う?」
立ち止まると、伊月くんは僕を解放してくれた。
振り返って聞くと、伊月くんは長ーいため息をついた後に目をすがめて笑う。
「サムシングブルーだっけ? それはいいんじゃねえの。好いた女の幸せを願うのが、男の中の男ってもんだからな!」
いつもの調子が戻ってきた伊月くんに、僕も笑顔になる。
そうこなくっちゃ。
しかも、お腹には赤ちゃんがいるらしい。
両家公認の中だったみたいで、妊娠判明と同時にとんとん拍子に話が進んでマタニティウエディングをするらしい。
伊月くんのお母さんから話を聞いた僕の母さんが教えてくれた。
伊月くんの様子がおかしい原因は、たぶんコレ。
「さて、なに買おうか」
伊月くんは僕の誘いに渋っていたけど、ちゃんと待ち合わせのデパートに来てくれた。
今日も頭はセットされてなくて、服装もだいぶ大人しい。
いつものヤンキーファッションじゃデパートって行き辛いから、ちょうどよかった。
「新生活で使うキッチンアイテムとかいいらしいけど、包丁はダメらしいよ。縁を切るって連想させるから。でも、伊月くん的にはむしろ送りたい?」
とりあえず一通り見て回ろうとフロアを歩きながらしゃべってたら、伊月くんに睨まれてしまった。
「逆に、運命を切り開くみたいな意味でアリっていう話もあるらしいけど」
ペアグラスとかも定番らしいけど、お腹の赤ちゃん入れてもう三人家族だって考えるとちょっと違う気もする。
「うわ、高っ」
食器フロアでグラスを見ていると、目玉が飛び出す値段だった。
確かに家にあるグラスよりもキラキラしていてきれいだけど、さすがに手が出ない。
「僕らのお小遣い何ヶ月分だろうね」
伊月くんに話を振ってもボンヤリとしていて返事がない。
黙ってついてきてくれてるだけ、まあいいか。
僕が決めて、お金だけ巻き上げよう。
とはいえ、中学生男子二人の小遣い予算を考えると、デパートよりもっとリーズナブルなお店へ行くべきだったかもしれない。
「伊月くんは結婚式行くの?」
「……呼ばれてはいる」
フロアを移動しながら聞いてみると、返事はあった。
でもこの感じ、招待はされてるけど行きたくない感じかな。
「そっか」
実は母さんから楓さんのおめでたい話を聞いたときに、伊月くんも家族で招待されてるって話を聞いていた。
でも、伊月くんの口からも聞きたかった。
知らんとか言われなくてよかった。
「サムシングブルーって言ってさ、結婚式のときに花嫁さんが青い物を身に着けると一生幸せになれるっていうジンクスがあるんだよ。知ってた?」
「知らん」
こっちは別に、知らんの返事でいいや。
素っ気ないけど、無視はやめたみたいでよかった。
「その青色ってのがさ、見えないところに身につけないとダメでさ……アレとか、ちょうどいいんじゃない?」
俯きがちに歩いていた伊月くんが顔を上げて、僕の指差す方向を見た。
そして、見る見る顔が真っ赤になっていく。
「おまえ、何考えてんだよ!」
僕が指さした方向には、光るトルソーが青いランジェリーを着ていた。
ふんだんにレースがあしらわれて、胸の谷間にはキラキラ光るチャームがついてる。
ショーツの腰とお尻の間あたりはリボンを編んだ感じで、肌が透けて見えること請け合いだ。
「ブラはさすがにサイズ難しいけど、パンツぐらいならなんとかなるでしょ」
かわいいけどちょっぴりセクシーな下着目掛けて直進する僕を、伊月くんが羽交い絞めにしてくる。
「楓姐さんにセクハラすんじゃねえ!!」
僕は姉妹がいるから、あんまり女性ものの下着に抵抗がないけど、一人っ子の伊月くんには効果抜群だったみたいだった。
「おまえの冗談は笑えねえんだよ!」
「じゃあ、伊月くんはなにがいいと思う?」
立ち止まると、伊月くんは僕を解放してくれた。
振り返って聞くと、伊月くんは長ーいため息をついた後に目をすがめて笑う。
「サムシングブルーだっけ? それはいいんじゃねえの。好いた女の幸せを願うのが、男の中の男ってもんだからな!」
いつもの調子が戻ってきた伊月くんに、僕も笑顔になる。
そうこなくっちゃ。