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涼音の学校を休む頻度は増えた。一週間に一度が、三日に一度に。そうやって徐々に会えない日々が増えていく。
僕は初めて学校をズル休みして、一日中窓の外を眺めて過ごした。空の果てが黄昏に染まる時、なぜかすごく悲しい気持ちになる。
「……会いたいな」
無意識に口から零れ落ちた言葉はすぐに泡のように消えて、少し早い蝉の音が聞こえてきた。
修学旅行の夜、彼女の気持ちに素直に答えられなかったことに、いまさら後悔が捗る。
あの場で、彼女を受け入れていたら、今頃どうなっていたのだろうか。僕の気持ちは、彼女には届いていない。無かったことになったあの言葉を、背に縋りつく彼女にもう一度投げかけていたら、僕らの関係は何か変わったのだろうか。
でも、僕は彼女の隣には立てない。今でもウジウジ悩んで前に進めない弱虫に、彼女のそばを歩く権利なんて、彼女が許しても他ならぬ僕自身が許せない。
「あと、二か月……」
壁にかかったカレンダーをめくるのは、もうずっと前に辞めてしまった。進んでいる日数を実感したくなかったから。
月日を意識しないように生活してても、季節の移ろいは確かに感じた。八月、彼女はこの世から去る。彼女の求めるものは、まだ見つかっていないし、僕の絵もまだ描けそうにない。
起きたら、時間が止まっていてくれないだろうか。そんな夢物語を求めて、目をつぶった。