「……」
「……」
「……むむ」
クロン、メルリーン、ジライの3人は一室で瞑想をさせられていた。
そう。ここは目印の1つ。一番近い目標の場所である。
クロンとメルリーンは瞑想に集中しているが、年長のジライはイラついていた。
「というか何故、ワシやメル様までやらないといかんのじゃ!」
ジライは叫びながら勢いよく立ち上がる。
そこに奥の部屋から老婆が現れ、ジライを杖で叩いた。
「何をするババアめ!」
「お主もジジイじゃろうが」
老婆は杖でジライを押さえながら、クロンとメルリーンの方を見た。
「うむ、なかなかの集中力。たいしたものじゃ」
2人の様子を確認すると老婆は手を叩いた。
「二人とも、いったんここまでじゃ」
その一言に二人は閉じていた目を開ける。
「ふう……」
メルリーンが一息つく中、クロンは老婆を見て訊いた。
「まさかこれで終わりじゃないよな、婆さん?」
「もちろんじゃ。こっちへ来なさい」
老婆はクロンを部屋の外に誘うと、また別の小屋の前に立つ。
「感じるかね?」
老婆は二人に尋ねる。
「なんとなくですけど……」
「ああ、嫌な気配が漂っている」
老婆は頷くと、クロンに中に入るよう手をかざす。
クロンも頷き、早速部屋に入ろうとする。
「クロンさん。わたしも――」
「いや、あなたはここで待ちなさい」
「え……?」
先ほどまでは瞑想を一緒にやっていた。
それを止められメルリーンは戸惑う。
「ここはね、己の心の修行場。この部屋は特に厳しくてね。二人同時なんて特に危ないから」
そう言って老婆はメルリーンを止めつつ、クロンに入るよう促した。
「行ってくる」
心配そうに見つめるメルリーンに、クロンは一言声を掛けると中に入っていく。
「その部屋の中でも瞑想を保っていられたら合格さ」
老婆はそう言うと、クロンが入った部屋をそっと閉めた。
扉が閉じクロンは部屋に一人になる。
「今のところ普通の部屋だが……」
クロンは周りを確認する。お香がたいてあるがそれ以外は何もない小さな部屋。
「とりあえず、やるか」
クロンは姿勢を整え瞑想に入る。
「……」
最初の数刻。静かな瞑想が続く。
(今のところ何も感じない。だが闇の力を制御する試練の1つ。ただで終わるわけが――ぐっ!?)
クロンの意識に急に襲い来る何か。
(ァァ……)
クロンの脳内に響く苦しみの声。そして……。
(ヨクモ……ヨクモ……)
「う、うわあああっ!!」
クロンにしか見えない何かが、クロンの脳内に映りこむ。
それにクロンは驚き叫び、瞑想を解いた。
「はあっ……はあっ……」
クロンはいつの間にか全身に汗を浮かべていた。
「おいおい……。タチの悪い試練だな、これは」
汗をぬぐい、クロンは再度、瞑想に入る。
だがこれも数刻の後、クロンの脳内にいろいろな苦しみが流れ込んでくる。
「ぐ……はっ。はあっ……」
またも途中で瞑想を解いてしまい苦しむクロン。
クロンの叫びが聞こえたのか、部屋の外からメルリーンが叫んだ。
「クロンさん!? 大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、心配するな」
クロンは強がりつつ言った。
(俺の脳内に響くこの声。これはやはり……)
そう。それはクロンの村の人たちの声。
(一族の、俺への恨みなのか……)
それが本当に村人たちの恨みの声なのか、それとも幻聴なのかはわからない。
だがクロンは、迫りくるその声たちに、とても瞑想どころではない。
(く……)
何度やっても途中で妨害をくらう。
クロンは少しずつ確実に疲弊していた。
(ふう。落ち着け……)
クロンが何度目かの瞑想に入る。
(……)
(ァァ……)
(来たっ)
クロンは身構える。
(クルシイ……クルシイ……クロン)
(!)
クロンの脳内に響く少女の声。
(レッカ……)
クロンの記憶の少女、レッカ。
まるで走馬灯のように、クロンの記憶内のレッカが映る。
だがそれがきっかけだった。
(違う! これはレッカじゃない!)
クロンの意識が瞑想に戻っていく。
(ありがとう。レッカ)
それからしばらく瞑想は続いた。
「あい、そこまで!」
声とともに、部屋の戸が開かれる。
クロンはまるで数日ぶりの日を浴びるように外に出た。
「クロンさん!」
メルリーンが駆け寄る。
クロンは珍しく、甘えるようにメルリーンの方に座り込んだ。
「ようやったのう」
老婆がねぎらう。
「まったく、酷い試練だよ婆さん……」
クロンは苦笑しながら老婆に呟いた。
「しかし、最後は急に集中できていたようじゃが?」
「ああ……」
クロンが最後に聞いた声。少女レッカの嘆きの声。
「レッカ……いや本当は一族の皆もだ。誰も恨み言や嘆きを言う人はいない。レッカの声がそれを思い出させてくれた」
クロンが笑顔を浮かべる。
(……?)
その表情に、メルリーンは嬉しくも暗い感情を抱いた。
それがなんなのか彼女はわからない。
「さて、それじゃあクロン。来なさい」
老婆はクロンを自身の前に立たせると、まじないを唱える。
「うむ。これが私の試練を突破した証明じゃ」
「ありがとう、婆さん」
クロンは礼を言うと、地図を開いた。
「次は……ここか」
印を確認すると、3人は次への旅路へ向かう。
(しかし、最初でこれか……。奴に復讐する力。並大抵じゃいかなそうだ)
「……」
「……むむ」
クロン、メルリーン、ジライの3人は一室で瞑想をさせられていた。
そう。ここは目印の1つ。一番近い目標の場所である。
クロンとメルリーンは瞑想に集中しているが、年長のジライはイラついていた。
「というか何故、ワシやメル様までやらないといかんのじゃ!」
ジライは叫びながら勢いよく立ち上がる。
そこに奥の部屋から老婆が現れ、ジライを杖で叩いた。
「何をするババアめ!」
「お主もジジイじゃろうが」
老婆は杖でジライを押さえながら、クロンとメルリーンの方を見た。
「うむ、なかなかの集中力。たいしたものじゃ」
2人の様子を確認すると老婆は手を叩いた。
「二人とも、いったんここまでじゃ」
その一言に二人は閉じていた目を開ける。
「ふう……」
メルリーンが一息つく中、クロンは老婆を見て訊いた。
「まさかこれで終わりじゃないよな、婆さん?」
「もちろんじゃ。こっちへ来なさい」
老婆はクロンを部屋の外に誘うと、また別の小屋の前に立つ。
「感じるかね?」
老婆は二人に尋ねる。
「なんとなくですけど……」
「ああ、嫌な気配が漂っている」
老婆は頷くと、クロンに中に入るよう手をかざす。
クロンも頷き、早速部屋に入ろうとする。
「クロンさん。わたしも――」
「いや、あなたはここで待ちなさい」
「え……?」
先ほどまでは瞑想を一緒にやっていた。
それを止められメルリーンは戸惑う。
「ここはね、己の心の修行場。この部屋は特に厳しくてね。二人同時なんて特に危ないから」
そう言って老婆はメルリーンを止めつつ、クロンに入るよう促した。
「行ってくる」
心配そうに見つめるメルリーンに、クロンは一言声を掛けると中に入っていく。
「その部屋の中でも瞑想を保っていられたら合格さ」
老婆はそう言うと、クロンが入った部屋をそっと閉めた。
扉が閉じクロンは部屋に一人になる。
「今のところ普通の部屋だが……」
クロンは周りを確認する。お香がたいてあるがそれ以外は何もない小さな部屋。
「とりあえず、やるか」
クロンは姿勢を整え瞑想に入る。
「……」
最初の数刻。静かな瞑想が続く。
(今のところ何も感じない。だが闇の力を制御する試練の1つ。ただで終わるわけが――ぐっ!?)
クロンの意識に急に襲い来る何か。
(ァァ……)
クロンの脳内に響く苦しみの声。そして……。
(ヨクモ……ヨクモ……)
「う、うわあああっ!!」
クロンにしか見えない何かが、クロンの脳内に映りこむ。
それにクロンは驚き叫び、瞑想を解いた。
「はあっ……はあっ……」
クロンはいつの間にか全身に汗を浮かべていた。
「おいおい……。タチの悪い試練だな、これは」
汗をぬぐい、クロンは再度、瞑想に入る。
だがこれも数刻の後、クロンの脳内にいろいろな苦しみが流れ込んでくる。
「ぐ……はっ。はあっ……」
またも途中で瞑想を解いてしまい苦しむクロン。
クロンの叫びが聞こえたのか、部屋の外からメルリーンが叫んだ。
「クロンさん!? 大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、心配するな」
クロンは強がりつつ言った。
(俺の脳内に響くこの声。これはやはり……)
そう。それはクロンの村の人たちの声。
(一族の、俺への恨みなのか……)
それが本当に村人たちの恨みの声なのか、それとも幻聴なのかはわからない。
だがクロンは、迫りくるその声たちに、とても瞑想どころではない。
(く……)
何度やっても途中で妨害をくらう。
クロンは少しずつ確実に疲弊していた。
(ふう。落ち着け……)
クロンが何度目かの瞑想に入る。
(……)
(ァァ……)
(来たっ)
クロンは身構える。
(クルシイ……クルシイ……クロン)
(!)
クロンの脳内に響く少女の声。
(レッカ……)
クロンの記憶の少女、レッカ。
まるで走馬灯のように、クロンの記憶内のレッカが映る。
だがそれがきっかけだった。
(違う! これはレッカじゃない!)
クロンの意識が瞑想に戻っていく。
(ありがとう。レッカ)
それからしばらく瞑想は続いた。
「あい、そこまで!」
声とともに、部屋の戸が開かれる。
クロンはまるで数日ぶりの日を浴びるように外に出た。
「クロンさん!」
メルリーンが駆け寄る。
クロンは珍しく、甘えるようにメルリーンの方に座り込んだ。
「ようやったのう」
老婆がねぎらう。
「まったく、酷い試練だよ婆さん……」
クロンは苦笑しながら老婆に呟いた。
「しかし、最後は急に集中できていたようじゃが?」
「ああ……」
クロンが最後に聞いた声。少女レッカの嘆きの声。
「レッカ……いや本当は一族の皆もだ。誰も恨み言や嘆きを言う人はいない。レッカの声がそれを思い出させてくれた」
クロンが笑顔を浮かべる。
(……?)
その表情に、メルリーンは嬉しくも暗い感情を抱いた。
それがなんなのか彼女はわからない。
「さて、それじゃあクロン。来なさい」
老婆はクロンを自身の前に立たせると、まじないを唱える。
「うむ。これが私の試練を突破した証明じゃ」
「ありがとう、婆さん」
クロンは礼を言うと、地図を開いた。
「次は……ここか」
印を確認すると、3人は次への旅路へ向かう。
(しかし、最初でこれか……。奴に復讐する力。並大抵じゃいかなそうだ)



