二人は山の麓の村を去ると、早速、最後の神具を求めて、南の大陸に向かい飛翔する。

「南の大陸って、僕たちが最初に降り立った場所?」

「はい。もし最初から神具を集めないといけないと知っていたらよかったのですが」

「それは仕方ないよ」

今は南の大陸に向かうしかない。二人は最初の地に帰っていく。

「戻ってきました」

ちょうど、中央大陸に渡るときに訪れた町に戻った二人。

そこを町人たちが迎える。

「英雄少年少女じゃないか。また会えるとは。どうしたんだい。海を渡ったんじゃ?」

「訳あって一度舞い戻りました」

「実は神具を探してまして」

「神具?」

町人たちは神具と聞くが、知らないようであった。

「ま、神具が何かはわからないが、ここで休んでいってくれよ」

「それはもちろん」

「よろしくお願いします」

エイリーンの飛行の疲れを癒すため、二人は宿をとる。

「もう、腐ポムの臭いはしませんね」

「う……。エイリーン、思い出させないでよ。忘れてたんだから」

コウルは苦笑いしながらも、ゆっくり背を伸ばす。

二人はその日、ゆっくり休んだ。

そして次の日、早速神具を求め動き出す。

「今度の洞窟はどこにあるかわかる?」

「もちろんです」

エイリーンの案内で、最後の神具に向け歩き出す。

今までと違い、その道中は楽だった。すぐに洞窟が見つかる。

「今回は早く洞窟が見つかったね」

「でも、洞窟が楽とは限りません。気をつけていきましょう」

二人が洞窟に入ろうとした時だった。忘れかけていた異臭が二人の鼻を襲う。

「こ、この臭いは……」

我慢して洞窟に入る。そこには腐ポムが数匹いた。

「出ていけー!」

コウルは殺さないように、魔力弾を放つ。腐ポムは蜘蛛の子散らすように逃げていく。

「まさか、神具の試練ってこれ?」

「それは……どうでしょう」

エイリーンは鼻を押さえながら呟く。

その後も、腐ポムを追い払ったり、モンスターと戦いながら進む二人。

そして早くも台座を見つけた。

「あれは神具の台座!」

「これで目的達成ですね」

しかし。

「あれ、何もない」

「そんな、ここには神具の鎧が置いているはずですが……」

「腐ポムとかモンスターが持っていったとかはないの?」

「一応、封印されているのです。モンスターには触れません」

二人は辺りを探ってみる。どこにもそれらしい物は落ちてもいない。

「面倒だけど、この洞窟の端から端まで回る?」

「そうですね」

二人は神具の鎧を求め、洞窟内の有りとあらゆる所を探す。

「隠し扉とかないよね?」

「そういう洞窟ではなさそうですが……」

時にはいろいろ試すが一向に見当たらない。そして。

「入り口に戻っちゃったよ……」

二人は途方にくれた。仕方なく一旦、町に戻る。

「おう、少年少女。神具とやらは見つかったのかい?」

「見つかったように見えます?」

「おう、そりゃすまん」

二人は歩きながら宿に向かおうとする。

「にしても、神具はどこに……」

「誰かが持っていった可能性もありますが、この町の人は知らないみたいですし……」

そう話していた時だった。

「そういや、数日前、いつかの商人が何かレア物を手に入れたとか言ってたぜ」

「え、それは鎧ですか?」

「いや、何かまでは知らないけどよ。レア物って言うんだから、あんたらの言う神具?とやらに関係してるかと思ってな」

「ありがとうございます!」

二人は礼を言うと、すぐさま走り出す。

「この光景、前も見たなあ」

男はひとり、そう思うのだった。



二人はいつか、商人アキナインがいた山を登っていた。行き先を聞いていなかったので、とりあえず向かうことにしたのだ。

「あれ、確かこの辺じゃなかったっけ?」

コウルは山道に洞窟がないか調べる。

「そうですね。この辺りで間違いないはずですが……」

エイリーンも周りを調べるが、洞窟らしき場所はどこにもない。

「まるで夢でも見てたみたいに何もない……」

二人がどうしようかと考えていたとき……。

「おや、いつぞやのお客様じゃないですか」

アキナインが山上から降りてくる。

「ア、アキナインさん。よかった、探してたんです」

「おやおや、お店にご用ですかね。少々お待ちください」

アキナインが杖を取り出し振ると、二人の横の岩場が一瞬で変化した。

「「えっ!?」」

二人は驚く。が、アキナインは気にせずに洞窟の奥に入ると、すぐに商品を広げた。

「さて、何が欲しいんです? 薬? 武器?」

「えっと、アキナインさん。神具の鎧を持っていませんか?」

単刀直入にコウルは聞いた。アキナインは驚いた表情で何故か回る。

「おやおや何故それを。つい数日前に手に入れたばかりの品ですのに」

「や、やっぱり、神具の鎧を持ってるんですね!」

二人で近づく。アキナインは二人を制止すると、奧の袋から鎧を取り出した。

「お探しのもの。神具の鎧です」

「こ、これ譲ってくれませんか」

しかしアキナインは首を横に振る。

「私は商人でして、欲しければ買っていただかないと……」

二人は嫌な予感がしながらも値段を聞いた。

「1000000GTPです」

「ひゃくまんー!?」

コウルは飛び上がった。

1000000など払えるわけがない。前回の風避けのマント50000も買えなかったのに。

「前みたいに、何かと交換というのは……?」

「1000000もするものなんてある?」

二人はとりあえず荷物を出してみる。

武器、食料、地図、そして……。

「あっ、これ……」

それは西の大陸、遺跡洞窟で手に入れた黄金の宝珠。

「そ、それは……!」

「え?」

「砂漠でしか手に入らない、砂漠の黄金珠じゃないですかー!?」

アキナインは飛び付くとすぐに宝珠を見定める。

「し、しかもこの大きさ。最高級ものですぞ……」

「あ、あの、アキナインさん?」

アキナインはハッとした。

「こ、この宝珠となら、神具の鎧と交換できますよ、いかがです?」

「え、もちろん。そちらがいいなら、こちらは大歓迎ですけど……」

「交渉成立ですねー!」

アキナインは素早く神具の鎧を綺麗な袋に包むと、コウルたちにそれを渡す。そして、また素早く宝珠をしまった。

「まいどー!」

二人を見送りながら、アキナインは大きく手を振る。宝珠が手に入り、すごく嬉しそうであった。

「これで神具が揃いましたね」

「これで……神の塔へ入れる?」

「おそらくは」

二人はいよいよ、最終決戦の地。神の塔へ向かうのだった。