「お父さん、荷物ここに置いておくね」

「悪いな、乃愛(のあ)。そんな重いもん運ばせちまって」

「これくらいなんてことないよ。そのかわり次からはちゃんと気をつけてよね」

夏休みも残り半分となってしまった8月中旬のこと。

今日から入院するお父さんに生活用品などの必要な荷物を届けるため、私は市内の病院へと足を運んだ。

原因は食中毒。

お酒に酔いすぎてほとんど生の状態の肉をいくらか食べてしまったらしい。

本当に手のかかるお父さんだな、とつくづく思う。

「そういや夏休みの宿題ちゃんと進んでるのか?」

「もちろん!1週間前には終わらせる予定だから期待してくれてていいよ」

少し心配そうに聞いてきたお父さんに対し、私は腰に手をあてて渾身のドヤ顔をキメてみせた。

余裕を持って終わらせるなんて、我ながら本当に偉いと思う。

これが漫画だったらきっと「えっへん」というような文字がついていることだろう。

「おっ、それは頼もしいなぁ。にしても1週間前に終わらせるのか、相変わらず真面目なとこは母さん譲りだな」

「ふふ、でしょ」

真面目なところはお母さん譲り。

その言葉に思わず自分の口元が綻ぶのを感じた。

「じゃあ私はそろそろ帰るよ」

「おう、ありがとな」

「うん、また明日」

少し他愛ない会話を交わしたあと、私はお父さんに別れを告げて病院をあとにした。

家に帰ったらやるべきことがたくさんある。

残りの宿題、夕飯の準備、家の中の簡単な掃除。

あとは……そう、毎日欠かすことのないあれも。