そういえば。
 昼ごはんを食べようと思っていた。
 それなのに、いつの間にか忘れていた。



 昼ごはんを食べよう。
 そう思ったとき。
 突然、玄関のドアの鍵を開ける音がして。


 パニックになっていた、いろいろと。
 だから、お腹が空いていることも忘れていた。

 だけど、ほっとした。
 それだからか、急にお腹が空いてきた。





 そうだ。
 肉じゃが結構、残ってるし。
 一輝くんも一緒に。


「一輝くん」


「なぁに、結菜ちゃん」


「お腹空いてない?
 もしよかったら、
 肉じゃがあるんだけど
 一緒に食べない?」


「うん、食べたい」


「じゃあ、待っててね。
 今、準備するから」


「何か手伝うよ」


「いいよ、気にしないで。
 こっちに移動してくるのに疲れたでしょ」


「大丈夫だよ」


「でも」


「遠慮してるのは結菜ちゃんの方じゃない?
 僕たち今日から一緒に暮らすんだよ。
 遠慮なんかしないで」


「一輝くん」


「それに
 僕が結菜ちゃんと一緒に
 昼ごはんの準備がしたいの。
 いいでしょ?」


 そう言ってくれた一輝くんは、やさしい笑顔をしている。


「ありがとう、一輝くん」