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 花火大会の会場に向かうまでは、私達は無言だったし、私は地面ばかり見てた。
 たまに聞こえる下駄のカラコロという風流な音が、どこか胸の鼓動に似て聞こえた。
 顔を上げれば浴衣姿の男女がいる。
 そういえば、宗も浴衣を持ってたっけな。
 今日浴衣じゃないのは私が浴衣を着れないから、気を使ったのかもしれない。宗はそういう人だから。
 中学生の頃きた水色にキラキラした浴衣、好きだったな。今思うと本当小学生みたいなデザインだけど、可愛くてお気に入りで。
 宗はシックリとした色味の紺色の着物で、帯は結構いいやつっぽい、なんとか織りのやつだと言っていた。
 友也は普通の服で、唯はやっぱり可愛い系のラメ入り浴衣で。
 少ない小遣いで屋台を巡って、皆でいろんなものを分け合って。

 生き返ったら、また皆で花火大会にワイワイ行くんだって思ってた。
 浴衣着て、屋台のかき氷やたこ焼き食べて、花火の写真撮って、四人で動画撮って……。
 けれど、私が生き返っても、それはもう二度と叶わない。これがきっと、四人揃っての最後の花火大会。

「あ! 宗達来た」

 ゴスロリ風の蝶々の描かれたレース浴衣を着た唯がそこにいた。帯はパッションピンクでキラキラしている。
 なんとなく、アイドルの舞台衣装みたいな印象だ。草履もスパンコールやラインストーンがついてキラキラしている。