「さあ。花火大会の前に何か軽く食べ物つまんで、準備するか。空腹だと屋台で並ぶ時ツラいしな。唯の浴衣楽しみだな? 咲香」

 笑顔を見せてベッドから立ち上がる宗。

「お前も持ってって欲しいものあれば言えよ。咲香」

 バタバタバタ。
 空気を読んだ宗が話題を変える。まだ準備には全然早い時間なのに。

 小さな黒いショルダーバッグを持って、財布だとかスマホをどんどんそれに入れて行く。

『うん……』

 元気を無理でも作れない私は、泣きそうな顔で静かに頷いた。