私は空の下から日本を覗き込む。
 もう何が何だかわかんないぐらいいろんなものが見えた。
 はあ。昔は私もあの中の豆粒だったんだなあ。世界は広くて、狭い。そういう事を死んでから実感した。

『神様ともうすぐお別れも寂しいなぁ』
「可愛いこと言ってくれるね。咲香」

 当たり前にあったものが全部そうじゃなくて、亡くなってからわかるって本当だったんだね。
 聞こえてたもの見えてたもの触れていたもの、もう二度と手に入らないかけがえのないものだった。
「まあ、また死んだら会えるよ。咲香。できれば百年は後であって欲しいけれどね」

『そうだね。その間に神様の姿も変わってたりして』
「僕ならそうかもね」

 神様は気まぐれだからね。

『ところですぐ次の依頼が欲しいんだけど。私は』

 フラフラ浮遊しながら私は尋ねた。

 今からはやる気持ちが抑えきれない。

「やる気だねえ、咲香。もうやりたいのかい? 休んできなよ。疲れてるんゃないのかい?」

 若干呆れ顔の神様。

『疲れてるけど』

 でも。

「けど?」
『早くやりたい? そりゃそうでしょう。もうすぐ生き返りなんだから』

 今すぐ宗に、皆にも会いたい。
 間違いなく今度こそ、生き返ったらもう大丈夫。
 元気だから心配しないで、って伝えるんだ。そしてずっと言いたかった私の気持ち。宗に、伝えるんだ。
 大好きだって、ずっとずっと大好きだったよって。失う前に絶対にちゃんと伝えるんだ。