「転生ってやっぱあるんだろう?」
『うん、あるよ。霊感少年なんだから知ってるんじゃないの』
「一応、確認。宗はいいやつだから、天国行きだし、絶対幸せな転生をするよな」

 地面を強く踏んだのか、床を踏む音を立てて少し寂しげに、だけどどこか満足げに友也が言った。

『そうに決まってるじゃん』
「だよな!」

 歯を見せて、友也は笑った。私は頷く。
 宗が地獄に落ちるわけないじゃん。ありえないよ。

 というかふたりの所に私達そろそろ戻るんじゃなかったの? と聞こうとした時だった。

「そういえば、咲香。お前はなんでいまだに成仏できてないんだ? もう死んでから二年経つのに。四十九日とかもとっくに過ぎただろう?」
『え』

 ギクリ。
 それは、神様と一緒に生き返りのための作業をしていたからで……なんて言えない。言えるわけない。

 私は即座に目を逸らす。何も言えない。どうしよう。あやしいよね? 不自然だよね。口の中がカラカラになる錯覚を覚える。

「……お前にも、未練があるのか?」

 何かを察したように、友也が淡々と言った。
 私は無言で頷く。

「死ぬのって怖いし、死んだことも怖いよな」

 やっぱり私は無言で頷く。

「オレ、霊感あるからこそ、死ぬのが怖ぇ。生きていくのも怖ぇよ。悪霊にならない自信がないぐらいには、この世に執着してる。だから、深くは聞かないけど、その咲香にとってのデカい未練、うまく断ち切れるといいな。」
『ありがとう』

 未練、……かぁ。
 生きてる間に宗に告白できなかった事。
 これが、私の人生最大の未練だろう。

 勇気を出せなかった弱い自分に、私は今も後ろを向いてしまっている。
 この世に戻った段階で、告白すればいいのに、結局後回しにしている。そんな、とっても弱くて卑怯でクズな私。
 こんな私を、宗が好きになってくれるわけないのに。
 わかってるから、怖くて怯えて言えないんだけどさ。

 ……情けな。