強い風が友也の髪をそっと揺らす。

 そして。
 友也が振り返り真剣な顔をして言った。

『? 何??』

 私はキョトンと首を傾げる。

「宗にとってこの最後の時間を、絶対に悔いのない時間にしてやろうな。これは幽霊と霊感少年のオレ達にしかできない事だ」
『うん!』
「そして、大事な友達としてする当然の事だ」
『うんうん。そうだね! もちろんだよ、友也』

 私達にとって宗はかけがえのない大切な人だ。
 そんな宗に、生まれてよかった、私達と出会ってよかったと思って逝って欲しい。
 未練をなくすまでは不可能でも、せめて、その辺だけはどうにかしたい。
 唯に伝えるタイミングが謎だけど、それでも唯にとっても宗は大事な友達だろう。
 悩みを相談できないぐらい、逆に大切に思ってるのだからきっとこの事実を知ったらショックを受けてしまうだろうけど……ごめんね。
 唯。仲間はずれにしてるわけじゃないからね。

 強い風がさらに二度吹いた。
 友也はため息をついてから、笑った。

「お前ら、幽霊同士仲良くやってくれよ」
『う、うん』

「宗に色々教えてやって、一緒に転生して来いよ。待ってるから」
『……ありがとう、友也』

 モヤモヤする気持ちに軋むハート。胃が痛いし視界がぐわんぐわんする。
 それでも私は言えない。私は生き返るチャンスがあるのだと。

 裏切り者の最低女なのだと、白状できない。
 皆に嫌われるのが怖いのだ。生き返れば記憶は無くなるとしても、今目の前にいる皆は大事な本物だから。

 いっそ、私が宗の代わりになれれば。いや、そもそどんな代わりだよ。何をするんだよ。
 はあ。謎すぎる現実逃避的思考にため息をつく。