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「お前、宗がもうすぐ病気で死ぬって知ってるだろう」
『あ、やっぱり友也は知ってたんだ』
「オレをバカにするな。余命近い人間の匂いぐらい、霊感があればわかる」

 なるほど……さすが霊感少年。舐めてました。
 私は友也の前に浮かびながら目を逸らす。あああああ。ヤバい。ヤバい相手に秘密がバレてしまった。

 よりによって宗の親友の霊感少年に。
 どうしよう。どうしよう。かかないはずの嫌な汗を私はかく。
 食べれないんだから何も吐く事もないだろうに気持ち悪い。感情が昂って、胃がムカムカする。

「どうして黙ってるんだよ。お前は」
『だって』
「人の命の大切はお前がよくわかってるんだろう!?」
『だからだよ!! 死ぬってわかって過ごす人生は濃いけどすごく重いから……私、いろんな魂を成仏まで見届けてきた。けど、みんな死ぬってわかったら態度が変わって、自然に生きれなくなったよ』

 急に善人になった犯罪者、攻撃的になった病人、諦めるように何もしなかった世界的スター……いろんな人を見て来た。
 明日がない事は、普通に生きるにはあまりにも大きな壁だった。
 誰だって死ぬまでによく見られたかったりやりたかった事はある。
 でもそれを知らされるのは決まって一週間前。それではほとんどの事は何も叶わない。

『それにいうのが怖いのもある。死ぬって知った宗が絶望するのが怖いの』
「気持ちはわからなくもないけどよ。アイツは周囲に隠してはいてもずっと病気を持って生きて来たから、普通よりは覚悟はある。知らせるべきだ。知らせて時間を有限に使わせるべきだ」

 友也は強い口調で言い切った。

『でも』

 それは正論だけど。
 時にはむしろ正論だかこそ実行できない事だってあるのだ。