「え、咲香?」
『唯?』
「ここ、夢の中だよね? なんで? 咲香……ああ。アイツの仕業か。さすが霊感少年」
目が覚めて、目の前にいたのは目を丸くした表情の唯だった。
淡い霧の中で私たちは向かい合って棒立ちしている。どこだ、ココ。夢の中なのはわかるんだけど、どうして私が唯と夢を共有しているの。
まあ、全部友也の霊感パワーなんだろうけどさ。あいつ最強だし。
『ねぇ、唯。なんで死のうとしたの?』
「知ってるでしょう。咲香が死んでからずっとまともに女友達できなくていじめられて、仕方がなく寄ってくる男の子と友達になったの。そしたら皆下心持たれて、さらにいじめが悪化して。なんかもう人生どうでも良くなっちゃって」
『男の子達から離れればよかったんじゃないの? それで死ぬのはおかしいよ』
「だってそうしたら、あたしボッチじゃん。やだよ、怖いよ」
悲痛な声をあげて、唯はしゃがみ込む。
『宗達がいるじゃん!!』
「ふたりは咲香がいたから仲良くなった相手だよ。あたしはおまけとしか思ってないよ」
『そんな事ないよ!』
特に友也はかなり唯の事好きだし。
宗だって前から心配していたみたいだし。
ふたりは思いやりもあるし、そもそも唯を友達だと思ってし思ってるよ。絶対!!
唯は目を伏せて首を横に振る。長いまつ毛が顔に影を作り、ふわふわとした髪が勢いよく揺れる。
『死なないでよ、唯! 唯が死んだら嫌だよ!! 唯が死んだら私以外にも悲しむ人だっていっぱいいるよ!!』
本当に、お願い。死なないで!! 唯!!
私が言えたセリフじゃないのかもしれないけど。
「あたしだって咲香ちゃんが死んだのは本当に嫌だよ! でもそれはどうにもならないから、前を向かなきゃって思って、あたしも頑張ったんだよ。一応」
わかってる。大人になるにつれ、内気に変わっていった唯の性格。
それは、可愛くて目立つ外見による女の子の嫉妬や、思春期の異性の視線だったと記憶にもある。