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 宗達が屋上から降りるのを横から浮いたまま見る。
 人気がある場所では、私は誰にも話しかけられない。
 それを察してるのか、疲れてるのか宗と唯は無言で階段を降りた。
 そして途中からエレベーターに乗る。

『…………』

 その間の時間が無限に長いように感じたのは、きっと皆同じだろう。
 友也がなぜ私達と一緒に降りなかったのかもわからないままの唯を見つめながら、唯の変わらない性格に懐かしさを感じる。

「唯。公園はこっちだから、ついて来い」

 エレベーターから降りて、マンションから出た後宗が言った。

「ん、ジュース買っていい。あ。自販機みっけ。えい」
「お前、あいからずイチゴミルク好きだな」
「うん。咲香ちゃんとあたしがどっちも好きだったやつ。初めて会った時に意気投合したんだよね。これ美味しいよねって」
「幼稚園だっけ。お前らの出会い」
「そう、あの頃からあたしはこんな感じで、男の子にだけモテて、女の子とは上手くやれなくて」

 唯はいちごミルクの蓋を開けて、少しだけ口付ける。

「そんなあたしを可愛い、お姫様みたいってストレートに褒めてくれたのは咲香ちゃんだけだよ」
「ま、確かに見た目はお姫様だよな。唯」
「小さい頃はいじめられるからって、フリフリひらひらした服を避けてたんだよね。でも、咲香ちゃんが着るたび喜んでくれたから、もういいやって」

 そうこうしているうちに公園について、ふたりは日陰にある木造のベンチに座る。暑い太陽の日差しに私は目を逸らす。
 ふたり並んで座る宗と唯。私もここに座りたい、けど、すり抜けてしまうから無理。