『青い空、白い雲。そしてその上に、この私! 幽霊少女咲香参上! 神様―! 今日も魂の成仏を無事、頑張って見送ってきた! 荒ぶる魂を沈めてなんとか成仏だよ!』

 黒髪ツインテールを揺らしながら高校時代のセーラー服をひらひら揺らす私。

はあ。死んだ時の衣装固定な幽霊はいくつになっても同じ容姿かつ同じ服だ。
汚れは全部消えてるけど、ずっと同じじゃずっと同じじゃ正直ちょっと、ね。女の子だもん。当然飽きる。
 なんで遊ぶのにセーラー服で出かけたんだろう。私。あの日せめて一張羅でもきていれば。
待ち合わせに遅刻寸前で急いでたもんね。仕方がない。

『あれー?』

 ちなみに私たち幽霊の移動の手段は空の上ではヒュン、と身体を浮かせて飛ぶ。幽霊たるとも、とにかく早く飛べなくては。

『神様―!? どこー!?』

 全力で叫ぶ私に周りの幽霊が耳を塞ぐ。

「うるさいよ。咲香。……ふむ。ご苦労様。これもうすぐ成仏百人目か。約束まで後一人だね」

 無駄に元気な私の声に、神様は私をみて笑う。
長髪の金髪の天使のような容姿をした着物の美男子である。
どこの国の人をイメージしての姿かは知らないけれど、実際の姿は別らしく、今の姿は気分でしばらくそうしてるものだそうだ。謎。

『良かった。約束覚えてて! 百人成仏無事させたらあの事件を無かったことにして人生やり直せるって!! あの約束!!』

 神様の首根っこを掴んで叫ぶ私。神様にそれを丁寧に引き剥がされる。うう。すみませんでした。

「そりゃ僕が言い出しっぺだからね。神様たるもの、約束は守るよ」
『わーーい!』

 全力で走って、神様に捕獲される私。ううううう。
 テンション上がるに決まってるじゃん! 走らせてよ!!

「さすがに人違いで殺されて、若いうちに、ってのはかわいそうだしね。まあ世界規模では人違い殺人ってのはよくあるんだけれど、なんだか急に僕も助けてあげたくなってね。あの頃の泣きじゃくる咲香を見て」
『私がとっても可愛いから惚れた?』

 なんてね! 冗談だけど!

「んなわけないけど、ちょうど僕も天国が人材不足で困ってたし。ちょうど助けて欲しかったから。事件を見てて勇気ある子だとは思ったし、縋り付いてくるから試しに声をかけたけど。……こんな短期間でこれは流石だね」

 フンフンと感心するように神様は言った。
 ドヤ顔で背の高い神様を見上げる私。

『えへへ。だって皆に早く会いたいもーん』

 唯。宗。友也。それに大事な家族達。親戚に街の人や先生……。
 彼らのあの事件でのトラウマも一緒に消えるんだから、私。絶対頑張るよ。

 今頃、彼らがどうしてるかは全く知らないけれど……。