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「なんで、咲香ちゃんがいないのにあたしだけが頑張らなきゃいけないの……もうやだ、もうやだ、やだよぉ」
『唯!』
予想通り。そこには黒いゴスロリでガッツリ決めた唯がいた。
唯は悲しい時はゴスロリをガッツリ着るから、遠目からも目立ってわかりやすい。
黒いアイラインは涙で滲んで、マスカラでバサバサになったまつ毛が瞼に張り付いている。
目の下は黒ずんでいて赤いけど、これはメイクなのだろうか。
先の丸い黒いリボン付きパンプスを二足揃えて、今まさに飛び降りる前と言った感じだ。
『唯! 私、ここにいるよ!!』
青い空に浮かびながら唯に近づく私。
『お願い! 唯!! 死なないで!!』
聞こえるはずのない叫びを、私はあげる。
ああ。本当にもどかしい。私が幽霊じゃなければ。
嫌、そもそも私が死んでなければこんな事態にはなってないんだった。はあ。最悪。
そこに汗だくになってやってきたのは。