『唯が高校でいじめられてる?』
「ああ。それで宮嶋は腐ったように荒れてる。……いつ言うか迷ってたんだけど、金沢でよくいろんな学校の男といて、声をかけると逃げるんだ」

 そんな。嘘だ。
 唯は恋愛には凄く純粋で、王子様を夢見るような子だったはずだ。

「俺らが助けようとすると誤魔化すし、本気で嫌がるんだ。アイツ」
『誰が唯をいじめてるの?』
「女子」
『なら仕方がないかも、男の子が入ると余計拗れるし。それで、そのほかの学校の男って』
「本人は友達だって言ってるから深追いしないようにしてる」

 なるほど。それなら本当かもだけど、嫌な噂が立ちそうだよ。
 特に女の子ってめざといし、それでますます唯はいじめられてるんじゃ……。

『なんか嫌な予感がする』
「え?」
『……あのね、あのへんに不愉快な気配を感じる』

 幽霊の本能だろう。私はとある割と新しいマンションを指差した。
 私にはそのマンションが黒くよどんで見えた。

 尚且つ嫌な濁った気配を感じる。死の匂いが強い。
 そこに、唯の気配が混じってる。
 やばい。これは絶対やばい。

『ごめん、宗。急いで! 行くよ!』
「え!? お、おう」

『早く!!』

 私は宗より前に勢よく空を飛んで、彼をそのマンションまで案内した。