結局、私が家に着くとバイバイって目的のはずのコンビニが近いのに入りもせずに、速攻で帰っていくの見ちゃって。
 その日からかな。宗をはっきり意識したのは。
 いつだって目で追いかけるようになったのは。
 メッセージアプリにドキドキしながらスタンプで「ありがとう」って送れば「何が?」なんて帰ってきたのを覚えている。
 そして玄関のポストには、私のための授業のノートのコピーが入っていた。
 勉強する際のアドバイスも丁寧に書き込んであった。

 そして「早く元気になれよ。無理すんなよ」と走り書きもしてあって。
 好き。大好き。宗が大好き。でもそれは私だけじゃなくて。
 他の女の子にも、やっぱり好かれていて、側にいられるだけで幸せな気がして、告白なんかできなかった。
 

 友情を壊したくなかった。嫌われたくなかった。好きすぎて、告白できなかった。

「おはよう、咲香。もう夜だけど、何か見たいテレビある? つけるけど」
『あ、おはよう。宗。いいの? じゃあ歌番組見たいなー』
「了解。俺も見たかったんだよな」

 夢から目が覚めて、宗の笑顔に私も笑う。
 あの頃から、今もやっぱり宗は変わらなく優しい。

『なんか、懐かしい夢を見てたの。中学生の頃の私たちの夢』
「あいつらと出会って、高校受験するまで、色々あったよな」
『うん。あの子にストーカーがついたり、文化祭で宗が女装したり』
「なんでそんな事覚えてるんだよ!? お前も男装したっけ」

 だって、可愛かったんだもん。宗、綺麗な顔をしてるから。
 内股で、モジモジした真っ赤な宗は、女の子に囲まれて泣きそうになってたっけ。あー。写真撮ってたはずだけどないのかな。また見たいなあ。なんて。

 結局は中学校の文化祭だから、小規模だったけどさ。
 高校では何するんだろって思ってたのにな、秋になる前に死んじゃったから、わかんないんだよね。私。悲しいな。

 宗の執事喫茶とか、カフェ系の衣装とか色々見てみたかったなー。何したか知らないけどさ。