保健室が見えてくる。ああ。よかった。もうすぐつく。
私は意識が遠のきながら、宗に寄りかかる。
すると、保健室にたどり着く。そして宗がドアを開ける。
「先生―今いいー??」
「あら、宗くん。また来たの? 何かあった?」
黒髪にメガネの人の良さそうなおばさん先生が顔を出す。白衣を着て、いかにも保健室の先生と言った風貌だ。
「今日は俺じゃないー。同じクラスの体調不良の女友達」
「わかったわかった。宗くんの具合はどう?」
「俺は平気。だからこいつ、咲香を見てやって」
「はいはい。わかったわよ」
まるで常連のような口ぶりの宗に、保健室の先生はニコニコと対応する。見慣れない白い教室は、消毒液のツンとする匂いがした。
「あ……宗、ごめ」
ようやく私は声を出すことできて、絞り出すように言った。
「大丈夫だから。先生―、早く咲香を休ませてやってー。相当具合悪いみたい。なんか飲めるものあればそれもお願い」
「ん……あっ!?」
私は途端真っ青になる。そんな私を宗は気付かないのかそのまま抱き抱えたまま、ベッドに運んでくれた。
なんで私が青ざめたかって。
それは。
宗の制服の白いシャツには私の生理の血がついていたからだ。最悪。ありえない、ありえない。
「ありがとう。宗、その」
恥ずかしすぎて頭の中がグルグルする。泣きそう。
「とりあえず咲香は休んで。俺は教室にもうすぐ戻るから」
「う、うん。分かった。あとで私も教室戻る。けど」
「大丈夫。何も気にするな。俺は大丈夫だから」
「宗」
「先生、咲香をお願いします」
「はいはい、わかったわよ。咲香さん、確か一年一組の村崎さんね?」「
「あ、はい。そうです」
「しばらく休んで行きなさい。お腹も温めて」
保健の先生は、私が生理だと気づいている様子だった。そりゃそうか。
「はい……ありがとうございます」
その後、宗は何もなかったように洗ったのかシミのない制服で授業の続きを受けていた。帰り、私の様子を伺うようにして歩み寄ってきた宗は、ナチュラルに家まで一緒に帰ってくれた。
ずっとその間静かにスマホをいじっては「近くのコンビニに用意があって」なんて言い張って。嘘でしょ、と思ったけど、嬉しくてつい私も宗あに甘えて。