「そうね。甘党すぎて苦いものとか食べれないわよねあの子」
「子供なんだよ。本当、お姉ちゃんは」
『……舞香、お母さん』
ああ。ふたりの中では私は生きてるんだ。
ごめんね。舞香。お母さん。私はもう、死んじゃったんだよ。
この世界のどこにもいないんだよ。
「この写真とか、良い顔ですね」
宗がふたりに話題を振る。あ。体育祭のパン食い競争だ。
なんでこんな写真あるの!? すっごく大口開けて、超恥ずかしい!!
「そうね。咲香はとびきり元気な子だから」
目逸らしながらお母さん。
「ですね。俺もそう思います」
「本当、いつか『お父さんお母さんただいま』って帰って来てくれるような気がしてね」
「咲香のお母さん」
「『長い間、私ずーっと迷子になってた、ごめんごめん。ねぇ、今日の昼ご飯はまだ?』って。お姉ちゃんなら言いそう」
「舞香ちゃん」
「だって、宗さん。そうでしょう。お姉ちゃんだもん。そう簡単に死ぬはずないんだよ」
あははと舞香は笑う。
「そうね。咲香だものね」
「なんて。バカな事いまだに考えるんだ。ウチ。バカだよねぇ。あんなに喧嘩してた姉妹なのに」
「お父さんも、仕事に逃げるように家に帰らないものねぇ」
はああ。とお母さんはため息をつく。舞香は呆れた顔でさらにため息。