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『うわあ。私の家だー』

 少し年季の入った一軒家。
 茶色の屋根に淡いレモンイエローの壁が懐かしい。
 花壇にも、花が咲いていてホッとする。お母さん園芸続けてたんだね。
 良かった。塞ぎ込んではないみたいで。

『久しぶりー。あんま変わってないね』
「そりゃそうだ。まだお前が死んで二年ぐらいなんだから。今から声をかけれないから、黙ってろよ。咲香」

 シーッと宗は人差し指を口元に当てる仕草をする。なんか可愛い。

『宗が変な目で見られるもんね。当然了解。独り言は呟くけど、許してね』

 私は少し寂しく思いながらそう答えた。

 そう。私は幽霊だから、普通の人には見えない。だから、外で会話は御法度だ。

「よし。行くぞ」

 宗の言葉に、私は力強く頷いた。