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「自分の仏壇に線香を備えたい、ねぇ。いいけど。俺元からたまに咲香の線香あげに行ってるし」
『えっ、そうなの!? ありがとう』
「当然だろう。仲が良かったんだから」

 真顔で言う宗は、お世辞を言ってるようには見えなかった。私は満開の花が咲いたように、ぱあああと明るくなる。

『宗、優しい! 嬉しい!!』

 クルクルと宗の周りを飛び回る私。嬉しい。嬉しい。超嬉しい。

「他の奴らも自主的に行ってるぜ。皆たまにお供物を買ったりしてな」
『嬉しいー』

 私はご機嫌に鼻歌を歌う。そうこうしているうちに、宗は身支度を終えていた。大人カジュアルな服装に着替えた宗は服をモノトーンにまとめて、お線香の事を意識してるように見えた。

「行くぞ。咲香」

 真面目な声で宗は言った。部屋には、眩しい太陽の光が入ってきていて、私は目を細める。

『うん! 行こう! 宗』

 私は、少し泣きそうになっていた。
 お父さん、お母さん、舞香。待っててね。今行くから。

 ドキドキする気持ちが抑えられなくて私は唇を噛む。皆、元気かな。
 宗の家の扉が開く。先ほどより眩しい輝きが目の前に広がる。

 さあ。出発だ。