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 寝れなかった。寝なくても、生きていける幽霊だとは言え、せっかくねれるなら寝たかった。
 だって起きてる間ずっと、私はぐるぐる同じことを考えていただからだ。

 朝日に照らされている宗の部屋のカーテンの隙間から空を眺める。
 鳥の鳴き声が聞こえる。そして寝返りを打った後、宗がムクリとベッドの上で起き上がる。

『おはよ。宗』

 私は笑顔を作り、宗の方へ振り向いた。

「咲香、はよ」
 こんな時、ある意味クマができないのは幽霊のいいところかもしれない。
 だって、宗の目にはクマができていたから。ごめんね。私のせいだよね。悩ませちゃったんだよね。
 本当、ごめんね。私は涙を堪える。
 そして、深呼吸をして宗を見る。

『ねぇ、宗。お願いがあるんだ』

「なんだ? できる範囲で叶えるけど、言ってみろ」

 宗はそう言って穏やかに微笑んだ。私はモジモジする。
 そして決意を決めて、言った。

『あのね……』