『行っちゃった』
はあ、とため息をつく私。疲れた。なんだか、気が抜ける。
嘘をつきながら人と接するって、宗が言う通りすごくしんどい。
キツイ。
『ごめんね……宗』
私は目を瞑りつぶやく。
本当に、ごめんね。宗。私には、本当のことがまだ言えないや。
私はふらりと窓から外に出る。夜風が冷たいはずなのに、全然冷たくなくて思わず笑ってしまった。
フワフワと浮きながら夜道を歩く。幽霊だから、暗さも変質者も怖くない。歩けば歩くほど、あちらこちらの家の賑やか声や光が胃にくる。
いいなあ。いいなあ。生きてるっていいなあ。
どんなにツラくても苦しくても。生きるだけで羨ましい。
『ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!』
私は思わず叫ぶ。宗まで聞こえてないといいけど。
『私も死にたくなかった!!!! おばあちゃんになるまで笑顔で生きたかった!!!! ちくしょう!!!! 犯人!!!! あの時私が刺し殺せばよかった!!!!』
きっと私は泣いている。口の中がしょっぱいからだ。
私の叫びは誰にも届かない。
隣をカップルがいちゃつきながら通りぎて行くので、殴った。
当然カップルは気づかない。
私はカップルの目の前であっかんべをしてからカップルから離れた。もう何がしたいのかわからない。
ただただ、虚しさが胸を圧迫していく。
『ああああああっ……うっ、ふぅ』
しゃがみ込んで、私は泣きじゃくった。
『もう、嫌。もうダメ。もう無理』
逃げたい。消えたい。いやもうこの世にはいないけど。
そんな中、ふと見上げた空はお月様が綺麗で。
月明かりに照らされてるのに、影すら作れない私は、スペシャルに惨めだった。