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 私達はしばらく、宗の部屋でのんびりしていた。
 宗はベッドに横になってスマホをいじって、私は宗が用意してくれて床にばら撒いた(私が写真に触れないため)思い出の写真を眺めている。

 どれもこれも懐かしい。
 小さな宗の写真も混ざってて、見ているだけでなんかエモい。
 スマホで撮った写真、プリントしてたんだね。四人で行った花火大会だとか、プールだとか。
 何度も、私夢に見たよ。

 けど、そのうちその記憶が曖昧になって、みんなの顔も記憶の中で別人になってるんじゃって不安になるようになった。
 すぐ側に皆がいたあの頃。
 全てが永遠だと思っていたあの頃。

「なあ、咲香」
『何? 宗』

 宗がスマホを触るのをやめて起き上がり、ベッドの淵に座る。

「俺、ずっとお前らに嘘ついてたんだ」
『え?』
「俺、病気でさ。いつ死ぬかわかんないんだ。だから。一日一日の大切さは他の誰よりも理解できると思うから。弱音とか、なんでも吐けよ。俺が出来ることならなんでも力になるからな」

 どこか心配そうに、宗は笑って言った。
 お日様みたいな、あったかい笑顔。
 いつも生きた私を照らしていた、宗のとびきりの笑顔。

『……宗。ありがとう』

 本当は、もう一週間ないんだよ。って言えるわけがない私は一生懸命作り笑顔を浮かべた。

「思い出、沢山作って天国に持ってこうな」
『うん』

 ごめんね。私は生き返る権利があるのに宗にはない。
 宗の方がクラスの人気者で、お家も裕福で、後継にならなきゃって前言ってたのに。

 私なんかチビで明るくはあるけれど、いつも落第スレスレのバカで。
 普通の家の少し落ちこぼれ気味の普通の女の子で。

 ううん、そんなの関係ない。正直今、生き返ることすら考えたくない。
 だって、宗を成仏させて生き返る未来って、私にとって何か意味があるのかわかんなくて。
 すごく頭がゴチャゴチャしてる。

 でも、時間は勝手にどんどん進んでく。
 いつでも、無情なぐらいに進んでく。
 私は二年、その現世での時間に置いてけぼりにされたけど。今度はもう一度、チャンスをもらって歩き出せるはずだった。

 そう。宗とあの子達と一緒に――。

 なのに、現実はこれだ。なんなの。なんなの。なんなの。訳わかんない。

 今までの努力は何のためにあったの? 神様も、先に教えてくれてもよかったんじゃないの? 無駄な努力じゃん。
 なんて。