『でも、本当は仲良し四人で、あのままおじいちゃんおばあちゃんになるまで生きたかったなぁ』
「咲香」
『成人式も、一緒に出たかったなぁ。キラキラの可愛い振袖も着たかったし、みんなの結婚式も行きたかったなぁ。でも、無理なんだよ。仕方がないよ。見守ってるとか、そんな綺麗事じゃないんだよ。もうそこにはないんだよ。私の居場所』
「さ」
『だから。みんなには私を忘れてほしくない思いと、サッパリ忘れて欲しい気持ち両方あるよ。楽しい思い出だけ、覚えていて欲しいけれど、それも無理な話だから』
「……咲香」

 明るく楽しいだけの人間関係なんてあるはずない。人間は喜怒哀楽のある生き物だから。

 家族や親友とすら、揉めたりするのが普通だ。
 それでも人は望んでしまう。
 幸せでいて欲しいとか、楽しくありたいとか。

 それは死者の方が、残る人に願う事でもある。
 どうか、自分のいない世界を幸せに生きて欲しいと。

 でもそんなグダグダした気持ちなんかどうでもいいのだ。

『皆が心から好きだから、だよ』

 宗が、大好きだから。

「咲香」
『ねぇ、宗。改めてお願い。どうか成仏するまでの一週間、宗のそば2位させてもらえないかな?』

 絞り出すような声と笑顔だった。
 宗は目をゆっくりと見開いて、その後笑った。夕暮れの太陽の光がベッドの方のカーテンの後ろから漏れてきた。

「俺に、できるのなら。見えるのが俺と多分アイツぐらいだろうし」

『宗……!』

「どうか、俺や周りの皆と最後の最高の思い出を作ってください。そして幸せに成仏してください。……咲香」




 こうして、私は自分勝手で最悪最低な嘘を宗についた。