『宗、そんな事はないから。私のわがままで勝手に死んだんだから、そんな事言わないで』

 気がつけば、私も泣いていた。私の涙は、どんなに泣いてもベッドを濡らさなかった。

「わかってる。咲香は人一倍正義感強いもんな。俺たちを助けたくて死んだんだよな。それのに、俺、俺」

 言いたいことは本当は全てわかってた。

「将来は人の役に立つ仕事がしたいって、咲香、いつも言ってて。それなのに、その夢を奪ってごめんな。お前の夢も未来も、俺達が背負っていかなきゃけないのに。俺、俺、俺……!!」

 助けてもらったのに、病気である事、いずれ死ぬ事。

 そんなのは、宗が一番二年間悩んできた事だろう。
 けども、それを知らなくても、知っていても。
 私はきっと同じ事をした。本能のままに、皆を助けようと動いただろう。

 だって大好きだから。皆が大好きで仕方がなかったから。

『あのね。宗。宗が生きていてくれて、本当に良かった。私の方が死んで良かった、っていう表現は変だけど、本当にそう思ったんだよ』

 酷いエゴだとは自分でも思うけれどね。

「よくない」
『本当に本当にごめんね。理想は私も助かる方法を見つけるべきだったんだけど、パニック状態のあの場所で冷静な判断は無理
だったの』

「それでも、俺達だけ生き残って、憎くないのか?」

 私は首を横に振る。

『うん。それはありえないよ、悲しいとか悔しい気持ちは全部犯人に向かってるし』

 皆が元気かどうか、ずっと心配だったんだよ?

 本当だよ。