涙が今更溢れてきて止まらない。なんで。なんで。どうして。
とっさに宗の遺族の前に戻る。急いでやってきた感じの服を着て集まる彼を見て私の胸はチクリと痛んだ。
遺体が白い布をかけられてベッドに寝てるのを、見たくなかった。
「兄貴、来世は幸せになれよ。いつ兄貴が死ぬかって怯えて怖くて近くに居られなくてごめんな」
幸二郎君がすすり泣きをしながら言った。目のはウサギのように赤く、きっと眠ってもないのだろう。
何度か写真でだけ見た宗の両親は、泣かないためにか唇をかみしめて無言だった。
「おれ。兄貴のかわりに頑張るから。どんどん病状が悪くなって昔みたいに遊べなくて寂しかった。それは兄貴もかもしれない。最近はもう、治療を諦め気味だったけど、友達にバレないように毎週注射打ったり大変だったよな」
通夜の準備が、近づいている。もうすぐ宗の「入れ物」だったものは形をなくして燃えて無くなる。
私がそうだったように、墓にいられて、概念になっていく。
「ごめんな、兄貴。本当に、ごめんな」
後ろを振り向けば、そこに宗がいるのだとなんとなくわかった。
だからこそ、振り向けれなかった。
無理だった。
頻繁に涙を拭う音が聞こえたりしたけど、無視をした
「来世も家族でいような。兄貴」
言葉にならない気持ちを、宗の家族はこめて頷く。
きっと後ろで宗も頷いているのだろう。
『長生きできなくてごめんな』
後ろに聞こえた宗のその言葉に、私はまた天国に飛んだ。