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 見慣れた白い雲。青すぎる空。
 でも、そこは地上ではなく、二年間暮らした住みなれたはずの雲の上だった。
 そこには呆れた顔の神様が腕を組んで立っていた。
 長い金髪はそのままに、着物は別の模様に変わっていて、夏らしさが上がっている。って、そんな事は今はどうでもよくて。

「来ると思ってたよ、咲香」
『神様!』

 はあはあ、と荒い息を私は吐いてしゃがみ込む。
 神様は困ったように頭を掻いて私を見下ろしていた。周りの天使も私を心配そうに見ている。

「咲香。後仕事は1日残ってるよね? なんでここに来てるの。なんとなく予想はつくけどねぇ」

 神様は私の手を引っ張り立ち上がらせる。
 フラフラになりながら、私はそれを従う。めまいがしたけど、力強く踏ん張った。

「仕事は最後までやらなきゃダメだよ。仕事なんだから。生き返れなくなるよ? 咲香」
『私はもう生き返れなくていい!!』

 絞り出すように私は大きく叫んだ。

「え?」

 呆れを含んだ驚き顔で、神様は目を見開いた。
 私は勢いよく続ける。

『私の命をあげるから。生き返らなくていいから。だから、宗を死なないようにしてあげて』