もうすぐ私達も病院に着く。緊張感が凄い。
 病院自体は行き慣れた地元の大きな病院なのに、なぜか怖い建物に辿り着いた気がした。
 心臓の鼓動の音が耳に直で響くような錯覚を感じる。
 やばい。やばい。

「手術するし、状況に寄っては会えるから近くで待機していて欲しいって」
「そっか。じゃあ病院の前のカラオケに入ろうか。柴沢」

 私はさすがに空気になって黙っている。ビックリしたタクシードライバーさんが事故っても困るし。
 本当は話したい。唯達も私の様子を伺ってはくれている。でも、口を開けば泣いてしまいそうだったから。
 涙を抑え込むためにも、私は無言を決め込んでいた。
 タクシーから降りて、カラオケボックスに入る。
 ドリンクバーだけはいっぱい頼んで、マイクは部屋に入っても誰も触らないまま、沈黙。

 キラキラの電気が本気で鬱陶しい。でも、人目を気にせず三人で話すなら、本来はこういう場所がいいのだ。
 今まで無視してきたけど。
 ストローで氷を回して誤魔化すように友也はスマホを見ては私達を見つめる。目に迷いが見える。何か言いたいのだろう。
 明るすぎる芸能人の映像と嫌気がするほどに楽しげな音楽を流し続けるカラオケの機械の電源を、唯が切った。
 そして唯のため息が聞こえる。