『あはは。ごめんね。現実なんだ。あの日私は死んで今幽霊として、宗の目の前にニュッと二年ぶりに現れたんだ。ありえない話でしょ。気持ちはわかるよ』

 まるでどこかのドラマの中での世界の設定のようだしね。我ながら、ないわ。

 そもそも生きてた頃なんか、私幽霊否定派だったし。ホラー映画を鼻で笑ってたし。今じゃ全然洒落にならないんだけど。
 私だって犯人を祟りたいと思った事もある。

 けども、それじゃあ結局どうにもならないとは冷静になれば分かったし。
 それより前に進む方法が欲しかった。ツラくても生きた意味が欲しかったし。
 だから私は今、こうやって他人の成仏を助ける仕事を続けれたのだろう。
 本気でツラかったけど、あのクソ犯人なんかに殺されるために生まれたとは思いたくなかったし。

「なんで、俺の前に? 咲香の家族とかは? もうその後に来てるのか?」
『いやーなんていうか。幽霊にも誓約があって、親族には私が見えなかったんだよね。なんでかはわかんないけれど……でも。宗には見えたわけ。何でかな。波長が合うのかもしれないね』
「アイツの方が余裕で幽霊なら見えそうだけどな。アイツのとこには行かなかったのか?」

 やっぱりそうくるよね! お邪魔虫のアイツ!
 生きてる頃もなんだかすごくウザかったけれど根はいいやつだと思ってたから、我慢したっけ。懐かしいなぁ。はあ。

『アイツより、ずっと宗の方が私とは明らかに仲よかったじゃん?』
「まあ、そうか。そうだよな。お前も音楽とか好きだしな」

 あ。宗、ちょっと嬉しそう。私も嬉しい。

 あの音楽とかは私も趣味や話を沢山合わせてたんだけど、それでも最後は本気でハマってたっけなあ。懐かしい。
 大好きな宗。お願い、もっと笑って。喜んで。

 そう、今も昔も思ってる。